経営の健全性・効率性について
①給水量の減少により悪化していた事業収支を改善するため、平均15%の料金改定を行った。新型コロナウィルス感染症の影響等により激減していた年間給水量は、営業用等の使用水量が回復したことから、給水量の増加及び料金改定により、4年ぶりに純利益を計上することができた。②累積欠損金比率については、昭和43年、地方公営企業法の適用を受け経営以後、これまで料金の改定と剰余金の確保により欠損金は発生していない。③流動比率については、新型コロナウィルス感染症等の影響により建設改良工事を控えていたため大幅に増加している。④起債はしておらず、今後もする予定はない。⑤料金回収率は料金改定により黒字を計上出来たため100%を上回っており給水に係る費用は給水収益で賄えている。⑥歳出努力の限界にあり、給水原価が類似団体と比較し高額となっている要因は、不要な県水受水によるものである。⑦施設利用率については、年間給水量がピーク時(昭和63年度、233万.)の1/2まで減少したことにより、利用率は1/4以下に低下しているため、今後、施設の更新は、適正規模にとどめる必要がある。⑧老朽管の更新により漏水は減少しており、給水区域も限定されていることから、類似団体よりも高い水準で推移している。
老朽化の状況について
①創業が大正15年と古いため、有形固定資産原価償却率だけでは施設の老朽化の判断は難しく、施設ごとの対応が必要である。特に取水施設(水源)の老朽化が激しく、優先的な更新が必要となっている。②管路経年化率は横ばいで推移しているが、昭和55年から始まった下水道整備に合わせて布設替した資産が、令和2年から40年の法定耐用年数を次々に迎えるため、経年化率は年々上昇していくことになり、それに合わせた更新計画の策定が必要となっている。③現在、配水管以外は、老朽化が表面化した時に対応しているため、限られた資金の中では、管路更新が不定期となっている。安定した水源確保のため、水源の更新を優先する必要があり、必要に応じて更新を行う状況となっている。
全体総括
当財産区はあわら温泉街に主に給水しており、年間給水量の55%を旅館が占めているため、給水量は温泉街の景気に大きく左右される不安定な状態にある。このことから、健全経営を維持するためには、数年分の損失を補填できるだけの利益剰余金を絶えず確保し、剰余金の減少に合わせた適切な料金改正が必要である。独立した会計で、独自の運営がなされており、厳しい財政状況の中ではあるが、尚一層の経費節減に努め、安全管理の徹底と、安定給水確保のための継続的な取り組みが必要である。人口減少、節水器具の発達、頻発する自然災害、新型コロナウィルス感染症等、給水量が落ち込む中、費用の40%を占める県水受水費が大きな負担となっている。歳出努力の限界にあり、過剰な責任水量の見直しが最重要課題である。