地域において担っている役割
公的医療機関として,一般診療はもとより,救急,精神,感染症などの不採算部門に関わる医療を提供している。特にも感染症医療は,県内で唯一,第一種感染症指定医療機関の指定を受けており,地域の中核病院としての役割を担っている。また,各種健康診査の実施,医師・看護師等による地域医療活動への従事,看護をはじめとする各種実習生の受入れ等,地域の保健衛生の向上に積極的に貢献している。なお,岩手医科大学移転後の救急医療について,内科,外科各1名の医師を配置するなど,市民が安心できるよう当院の救急受入体制を整備した。
経営の健全性・効率性について
経常収支比率,医業収支比率については,医業収益の微増に対し,給与費の増(4.8%増)による影響が大きく,比率を悪化させることとなったものである。救急医療体制の拡充による手当の増,応援医師賃金の増,退職給付引当金繰入の増などが人件費増の要因だが,今後は,収益増に連動する取組みが課題となっている。なお,材料費対医業収益比率は,ベンチマークを活用した価格交渉の取組みにより,値引率向上を実現した結果である。病床利用率,入院・外来患者1人1日当たり収益は,平均値を下回っているが,不採算部門の精神科を抱えていることと,診療単価が平均的に低い内科系診療科の占める割合が高いことが要因である。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率については,帳簿価格の7割強を平成10年度に建設した建物本館が占めており,耐用年数の半分を経過した時期に来ていることから,計画的な施設の更新等を検討する必要がある。1床当たり有形固定資産については,病床数を変更していないことから大きな変動は無い。なお,施設更新の計画策定に当たっては,建替え,長寿命化工事等の手法の検討に加え,地域医療構想における当院の役割,機能に則した施設のあり方を並行して検討することが求められる。
全体総括
平成19年4月から地方公営企業法の全部適用に移行し,3次にわたる経営改善計画を策定しながら病院改革を進めてきた。その結果,着実に診療体制の強化,患者数の増加,赤字幅の圧縮を実現し,平成30年度は43百万円弱の純利益を計上したが,令和元年度は72百万円弱の純損失を計上することとなった。公立病院として地域医療圏において求められる医療を提供する使命を持つが,岩手医科大学の矢巾町移転後の救急医療体制の確保,感染症への対応などが求められる。その上で,持続可能な健全経営を実現するためにも,まずは単年度の収支均衡を図り,累積欠損金の解消に努めていく。