地域において担っている役割
松本医療圏の西部に位置し、主に農業振興地域と中山間地域が岐阜県境まで広がる松本市西部地域における唯一の病院として立地しています。公立病院として、救急医療、災害時における医療、へき地医療、周産期医療、小児医療など長野県保健医療計画に基づく医療体制の構築と、その他、地域に必要な医療の提供を政策的に担っています。また、松本医療圏における第二種感染症指定病院の指定を受け、二類感染症病床機能を有しています。
経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、病床利用率の回復、入院患者1人1日あたり収益及び外来患者1人1日当たり収益が増加したことにより、H29は95.4%と前年度と比べて1ポイント回復しました。類似病院との比較では、経常収支比率は、H27以降平均値を下回っており、病床利用率はH29で平均値を2.7ポイント下回りました。また、入院患者1人1日当たり収益及び外来患者1人1日当たり収益が平均値を下回っています。医療の質確保のための職員の増員が、職員給与費対医業収益比率及び医業収支比率の悪化に影響しており、職員の適正配置に向けた取組みが必要です。医業収支比率は低下傾向にあるものの、平均値を上回っていますが、一方、経常収支比率は平均値を下回っています。これは、類似病院と比べて医業外収益として計上している一般会計からの繰入金が小さいことが要因となっています。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率はH29で55.6%と平均値を8.7ポイント上回っています。近年、平均値との差が大きくなっており、施設・設備の老朽化が進んでいる状況です。特に医療機器等の老朽化が進んでおり、器械備品減価償却率は75.2%と高くなっています。設備投資を抑えてきたことによる施設・設備の老朽化への対策としてH26からH28の3年計画で大規模な設備投資を実施しました。しかし、H29における減価償却費比率は5.5%で、同一規模の一般病院・自治体病院の平均と比べて低く、設備投資を極力抑えた経営状況です。1床当たり有形固定資産は増加していますが、H26以降は平均値を下回り、かつ平均値との差が大きくなっており、設備投資が不十分な状況です。
全体総括
病院経営においては、医療機器の更新など、経営規模に見合った設備投資が必要です。設備投資に当たっては地方債を起こしますが、その元利償還金に対しては、一部、一般会計からの繰入があります。残額は病院が自己負担するものですが、これには経営により生み出した現金を充てます。しかし、H26以降、4期連続の経常赤字となっており、必要な設備投資が難しい状況です。安定した病院経営のためには収支の改善が必要です。このため、当院はH29.3に策定した松本市立病院新公立病院改革プランに基づき、患者数の確保と単価上昇による医業収益の増加と、職員の業務量把握に基づく適正人員配置計画の策定に向けた取組み、また、一般会計からの繰入ルールの見直しなどを通して経営の黒字化を果たし、累積欠損金を解消していきます。