経営の健全性・効率性について
当事業は、一般会計からの繰入れや長期前受金戻入など、使用料以外の収入のほか、公共下水道等他の事業と一体で経営しなければ、健全性が保てない状況である。総収益のうち下水道使用料の占める割合は26%で、繰出基準に基づく一般会計繰入金など使用料以外の収入を含めても費用を賄えていないが、①経常収支比率は0.7pt上昇し、ほぼ横ばいである。また、②累積欠損金については、他事業も含めた会計全体での欠損金が生じないよう、更なる経費削減に努める。③流動比率は、5%未満の低い値で推移しているが、これには流動負債に次年度償還する建設改良等に充てた企業債を含んでいることも影響している。その財源は次年度の使用料(一体で経営する他事業分も含む)や一般会計繰入金を予定している。④企業債残高対事業規模比率は、令和元年度に公債費に対する繰出金を見直し、企業債残高に含まれる一般会計負担予定額が減ったため比率が大幅に上昇した。当年度は、企業債残高の減少に伴い前年度に比べ比率は低下している。⑤経費回収率・⑥汚水処理原価は、減価償却費や支払利息等の費用のうち、一般会計繰入金など使用料以外の収入を充てる費用を除いて算定したものである。下水道使用料はほぼ横ばいだが、汚水処理費の減少により経費回収率は2.9pt上昇し、汚水処理原価は低下した。⑦施設利用率が低い要因として施設規模が過大となっている可能性があるが、現在、5処理施設の公共下水道への接続事業を進めている。⑧水洗化率の大幅な上昇は見込めない状況であるが、接続勧奨や排水設備の戸別調査を行い、未接続世帯の接続促進を引き続き行う。
老朽化の状況について
建設事業は平成18年度に完了している。償却資産のうち、管渠は現時点で老朽化の度合は低いが、処理場の機器等については、法定耐用年数を超えるものが相当数あるため、早急に老朽化の状況調査と更新計画の策定が必要である。①有形固定資産減価償却率は年々上昇し、類似団体の平均を上回った。また、今後も上昇するものと見込んでいる。②管渠老朽化率は、法定耐用年数に達したものがないことから0%となっている。③管渠改善率一部の管渠において改修を実施しているが、これは管渠の支障移転を行ったものである。現時点では計画的な改修の予定はない。
全体総括
公共下水道のほか、集落排水事業や公設浄化槽事業を含めた下水道事業全体として、概ね健全な経営であり、今後も、上下水道事業経営の指針となる経営計画にある施策に関し、進行管理を通じて毎年度事業全般の実効性を高めていく。下水道事業では、この計画に基づき接続促進等による収益確保、農業集落排水施設の公共下水道接続等による費用縮減や人材育成による経営基盤の整備をするとともに、適切な修繕・更新による施設設備の長寿命化や維持運用に努めていく。また、令和10年代に到来する下水道施設管渠の更新改築期を見据えて、従来の普及整備、日常管理のための計画から、更新改築計画と料金、収支見通し、事業担当の人材育成を含む「事業管理計画」で下水道事業の再構築を図ることで、将来にわたり事業を健全に運営できる体制を構築していく。