経営の状況について
本県の電気事業は、水力発電として大野川発電所外11発電所で最大出力70,280kWの発電を行ってきたが、平成30年4月から大野川発電所(出力10,100kW)がリニューアルに着手したことによって、令和2年6月までは同発電所を除く11発電所(最大出力60,180kW)が稼働、令和2年7月豪雨で阿蘇野川発電所が被災したことによって、令和2年7月からは両発電所を除く10発電所(最大出力58,680kW)が稼働している。また太陽光発電として平成25年7月から松岡太陽光発電所で最大出力1,362kWの発電を行っている。令和2年度は、年間の降水量が過去10年平均比で91.7%と年間降雨量が少なかったことから総収益は対前年度比90.5%となったが、総費用は委託費が減少したことなどから特別損失を除いた費用が対前年度比で2.2%減となった。経常収支比率及び営業収支比率は、前年度に比べ下降したが、引き続き100%以上を確保している。また供給原価は、料金単価の安い大野川発電所が停止していることや年間発電電力量が少なかったため、全国平均を上回った。流動比率は、100%を超えており毎年十分な支払能力を有している。公営企業会計基準の見直しにより平成26年度決算からそれ以前は固定負債に仕訳されていた1年以内に償還予定の企業債や特別修繕引当金等の各引当金が流動負債へ仕訳されるように変更されたが、それでも十分な支払能力を有しており、安定した経営と低廉な電力供給を行うことができている。
経営のリスクについて
○水力発電設備利用率は、令和2年度は渇水により全国平均より低くなっている。修繕費比率は、老朽化した発電所のリニューアルを計画的に実施しているため、今後、低下傾向になると考えられる。R2年度は保安規程により10~12年ごとに実施する発電所オーバーホール工事がなかったこと等から全国平均より低くなっている。企業債残高対料金収入比率は、平成30年度から大野川発電所リニューアルの建設改良のため起債していることから増加している。当該企業債は大野川発電所が運転再開したのちのFITによる収入で償還する計画である。従来の事業分は計画的に企業債の償還を行っている。有形固定資産減価償却率は、固定資産の老朽化が進んでいることから全国平均に比べて高い比率となっているが、老朽化した発電所のリニューアル事業を計画的に実施していくこととしている。○太陽光発電設備利用率は、年間の日射量が多かったことから前年度に比べ増加している。修繕費比率は、平成25年度の運転開始以来、大きな修繕は発生していない。企業債残高対料金収入比率は、建設に要する経費について企業債を活用せず、これまで水力発電で蓄積してきた資金を活用したことから0%である。有形固定資産減価償却率は、平成25年度に運転開始し減価償却が始まっていることから、計画どおりの推移となっている。FIT適用終了(R15)後の事業のあり方については、現時点で方針は定まっていないが、今後、FIT終了による電力料収入の減少を念頭に、事業内容の見直し等を検討していく。
全体総括
以上のことから、大分県電気事業は、安定した電力料収入に支えられ良好な経営を維持していること、短期・長期の財務の安定性が保たれていることなどから、経営成績、財務状態ともに概ね健全であると考えられる。今後は、平成30年度から10年間の経営戦略やその実施計画である4年間のアクションプランに則り、安定供給に向けた老朽化・耐震化対策の推進、持続可能な安定した経営基盤の確立、地域社会への貢献等を推進していく。