経営の状況について
令和3年度の経営状況については、上期は暖気により融雪出水の時期が早く、4月の流入量が平年を上回ったため、当局最大規模で固定価格買取制度(FIT)の適用を受けたシューパロ発電所において効率的な発電ができ、また、下期は降雨により鷹泊発電所や岩尾内発電所において12月の流入量が平年を上回ったことなどから、安定した年間発電電力量及び電力料収入を確保できた。こうしたことから、①経常収支比率、②営業収支比率については、指標である100%を上回っている他、全国平均値も大幅に上回っている。また、⑤EBITDA(減価償却前営業利益)についても、昨年度より増加し、全国平均値を上回っているため、良好な状況にある。③流動比率については、指標である100%は上回っているものの、当局では建設や大規模改修について、これまで概ね企業債の借入で資金を賄ってきたことから、企業債償還金が多く、全国平均値と比較して低い傾向は続いている。令和3年度は、発電電力量が昨年度より増え収入が増加したことや改修事業費が減少したことなどから、前年度と比較すると増加となった。④供給原価については、発電電力量は昨年度から増加したものの、経常費用が増加したことなどにより、前年度と同程度の値となり、全国平均値も下回って推移している。
経営のリスクについて
①設備利用率については、毎年度、全国平均値を上回って推移しているが、これは安定した水資源や施設の稼働率を確保しているためである。また昨年度と比較しても上回っており、安定した設備利用ができている。②修繕費比率については、全国平均値を下回って推移しているが、これは発電施設の大規模改修を計画的に進めていることや、大規模改修を控えた施設について、最小限の修繕にとどめているためである。なお、平成29年度は川端発電所でオーバーホールを行ったことから、一時的に上昇している。③企業債残高対料金収入比率について、全国平均と比較すると、平成27年度以降FIT適用による収入の増加により低下したものの、引き続き上回って推移している。これは建設費用や大規模改修費用をこれまで概ね企業債の借入で賄ってきたためであり、現在大規模改修中の清水沢発電所改修事業の事業費についても、企業債の借入により確保している。今後は、内部留保資金を確保しつつ、企業債借入の抑制を図っていく。④有形固定資産減価償却率については、近年、全国平均値を下回って推移しているが、これはシューパロ発電所や清水沢発電所など新しい施設が多いためである。今後とも老朽化した施設の改修等を計画的に行っていく。⑤FIT収入割合については、全国平均値を上回る高い数値となっているが、これはFITの適用を受けて建設したシューパロ発電所の運転開始や、大規模改修で新たにFITの適用を受けた滝の上発電所や清水沢発電所が稼働したためである。FIT期間(20年間)終了後は、電力料収入が大きく減少するリスクがあるため、その後の収入減少を考慮した経営を行っていく必要がある。
全体総括
・令和3年度は、融雪出水や降雨等により流入量が平年を上回ったことから、予定より発電電力量が増え、前年度と比較しても純利益が増加しており、各指標とも全国と比較しても経営上顕著な問題は見られず、現在の経営状況は安定しているものと考える。・今後も引き続き電力の安定供給に努めるほか、電力システム改革の動向などに対応するとともに、令和元年度に策定した経営戦略に基づき、老朽化施設の改修等を計画的に進めていく。