経営の状況について
北上第1・第2ソーラー発電所(以下「発電所」という。)は、「北上市あじさい型スマートコミュニティ構想モデル事業」(以下「モデル事業」という。)の重要な構成事業の一つであり、平成25年度に建設したものである。このモデル事業は、国の補助事業を活用して実施したもので、採算性が成り立ち自律的な事業継続が見込まれることが採択の要件となっていた。そのため、一般会計から繰入せずに自律的な事業継続を行うため、固定価格買取制度を活用して20年間の収益を確保することで(発電所はFIT期間のみの運用)、発電所やモデル事業で構築を行う施設の設備構築費、維持管理費、発電所撤去費に充てるほか、市の環境・エネルギー事業に再投資する事業計画になっている。①収益的収支比率は前年度と比較して減少している。なお、平成28年度の比率が他の年度と比較して高いのは、起債の元金償還の開始前でかつ一般会計への繰出金(モデル事業の設備構築費)が少なかったことによる。単年度収支は黒字であり、一般会計からの繰入等は行っておらず、総収益で賄えていることから経営状況は安定しているといえる。②営業収支比率は前年度と比較して低下となっている。これは、全体的に天候不良が多く、冬期間は例年よりも積雪が多いことにより営業発電電力量減少に伴い、営業収益(売電収入)が減少したことによるものである。なお、営業収益(売電収入)は事業開始時の収益シミュレーションの値を、上回っており、将来の設備更新に備えた基金を創設して順調に積立を行っていることから、経営状況は安定しているといえる。③供給原価は前年度と比較して増加している。営業収益が天候不良により減少、また総費用も減少したが、地方償還金は前年度と変わらないために、販売電力量1MWhの金額が増加したものである。なお、太陽光発電は気象状況に左右されるため、発電電力量の計測データ等から故障等の早期発見に努めているほか、設備の定期点検により予防保全を図り、総費用の削減に努めている。④EBITDA(減価償却前営業利益)は前年度と比較して低下している。これは、上記項目と同様に、営業収益が減少したためである。なお、事業計画では、想定発電量は太陽光パネルの経年劣化を0.5%/年と見込んでおり、営業収益が年々減少し、減価償却前営業利益も減少していく想定となっている。
経営のリスクについて
①設備利用率は前年度と比較して減少している。これは、冬季の積雪が多かったことにより発電量が減少したためである。今後は冬期間の積雪が多い場合の対応が必要となる。なお、発電量を安定して確保するため、日射計、温度計、信号変換器等からデータを収集し、発電量・発電効率推定診断等を行い、設備の故障等の早期発見に努めている。また、事業計画における想定発電量は、太陽光パネルの経年劣化を0.5%/年として見込んでおり、設備利用率は年々低下していく想定となっている。②修繕費比率は平成30年度に平均値を大きく上回っているが、これはパワーコンディショナーの部品交換を行ったものである。令和2年度は、前年度より上昇しているが、パネル破損による交換工事、第1・2発電所のUPS交換、第2発電所DRG交換を行ったものである。③企業債残高対料金収入比率は前年度と比較してほぼ横ばいである。これは、元金の償還が始まっているためである。売電収入が大きく増減しない限り、毎年度減少していく見込みである。④FIT収入割合は、全量を固定価格買取制度を利用して売電を行っているため、横ばいとなっている。当市の電気事業は、固定価格買取制度の終了後は発電施設を撤去して更地に戻し、事業を終了する計画としており、20年間の維持管理・設備更新に係る費用のほか、撤去費を見込んで収支計画を立てている。各指標による分析の結果、経営のリスクはないものと考えられる。
全体総括
収益的収支比率及び営業収支比率はいずれも100%を超え、売電収入の下で健全な事業経営が行われているといえる。また、事業開始当初の余剰金については基金を創設して積立を行っており、将来の設備更新にも備えている。今後、モデル事業スキームである環境・エネルギー事業への再投資額の増加や設備更新費の支出が予測されることから、更なる経営の基盤強化と効率化を図るほか、令和元年度に策定した経営戦略に基づく長期の収支計画により、健全な事業運営を進めていく。