経営の健全性・効率性について
平成29年度については、商業施設等の出店はなく、使用料単価の高い大口使用者の排水量も停滞傾向であり、有収水量は微増であったが使用料収入は微減に転じた。しかし、長寿命化対策工事等の実施により汚水・雨水ともに維持管理費用が減少傾向であり、一般会計繰入金の補填もあり収益的収支比率は改善している。使用料で回収すべき汚水処理費は増加し、経費回収率は減少しているが、100%を超えており、汚水処理原価も類似団体平均値を下回っていることから、下水道使用料収入で汚水処理費用は賄えていると言える。今後も使用料収入の大幅な増加は見込めない中で安定した経営を保つためには、大規模な修繕等が発生しないよう計画的な維持管理・点検を行う必要がある。過去の大規模な面整備の際に借入れた企業債の償還が進んでおり、企業債現在高は今後減少していく。下水道普及率も88.58%と面整備も進んでいるため大規模な投資の予定もなく、企業債残高対事業規模比率については漸次減少していくと想定される。しかし、施設の老朽化対策や、近年重点項目となっている耐震対策等への投資検討も必要である。ストックマネジメントを適正に行い、補助金等を有効活用しながら適切に投資し、経営への影響を最小にするよう努める。水洗化率は90%を超え、類似団体平均値を上回っているが、近年は同水準で推移しており、未接続世帯の水洗化が進んでいるとは言い難い。未接続世帯には高齢者世帯も多いため、各世帯の状況も踏まえ、水洗化を促進していく必要があると考える。
老朽化の状況について
昭和54年に公共下水道工事に着手しており、整備開始当初の管渠の老朽化が懸念される。平成26年度に策定した長寿命化計画に基づき、順次汚水管の管更生を実施しており、平成29年度は0.68kmの管更生工事を実施した。更生工事と平行してストックマネジメント計画策定にも着手し、計画的な維持管理を行っていく必要があると考えている。また、当初に布設された管渠等の耐震化も必要であり、総合地震対策計画を策定し、老朽化対策との調整を図りながら耐震化対策にも着手していく。
全体総括
公共下水道の供用開始から30年以上が経過し、面整備もほぼ完了しつつある。今後、下水道区域の大幅な増加はなく、下水道計画区域外での宅地開発が増加していることからも、下水道区域内人口の継続的な増加は見込めない。使用料収入の大幅な増加は見込めない中で、今後は面整備のみならず既存施設の維持管理や耐震対策等に取り組んでいく必要がある。経営の健全性を保つためには、今後、策定を予定している経営戦略において投資試算・財源試算を十分に精査し、財政収支のバランスを意識しなければならない。未接続世帯への水洗化促進と計画的なストックマネジメントによる維持管理費の平準化、費用対効果を意識した投資検証を随時行い、公共下水道事業の経営を持続可能なものとしていかなければならない。