経営の健全性・効率性について
収益的収支比率については、各年度で総収益に対して総費用及び地方債償還金の割合が高く、100%未満であることから常時単年度収支が赤字であることを示している。水洗化率の増加とともに使用料収入が年々増加しているものの、他会計繰入金の減少によって総収益は減少傾向にある。総費用及び地方債償還金も年々減少しているが、総収益の減少割合よりも少ないため収益的収支比率は減少傾向にある。平成29年度は、繰入基準を見直し他会計繰入金が増加したため総収益が増加した。企業債残高対事業規模比率については、類似団体と比較し低い数値となっている。供用開始から30年程度経過しており企業債残高が減少したことに加え、面整備が進み使用料収入が順調に増加したことが要因であると考えられる。また、長寿命化計画未策定による更新費用の先送りも要因となっている。経費回収率については、平成28年度まで汚水処理費用の約80%が使用料で、残りの約20%を繰入金等で賄っている状況であったが、繰入基準の見直しにより汚水処理費用が減少したことから平成29年度は約100%となった。汚水処理原価については、類似団体が減少傾向にあるのに対し、本市はほぼ横ばいとなっていたが、繰入基準の見直しにより汚水処理費用が減少したため、平成29年度は類似団体の平均値を下回った。水洗化率については、人口減少に伴い処理区域内人口が減少しているものの、水洗化人口は着実に増加しているため水洗化率は上昇している。
老朽化の状況について
管渠改善率については、管渠の部分修繕で対応しており更新自体行っていないことから数値として計上されていない。下水道事業面整備の完了後(平成31年度以降)老朽化対策に取り組む予定である。
全体総括
収益的収支比率及び経費回収率が100%未満であるため、財源である使用料収入の底上げが必要と考えられる。使用料収入については、平成24年1月に下水道事業全体として段階的に統一を図っており、最終統一年度から日が浅く早急に使用料を改定することは困難である。しかし、今後事業を継続していくには、将来見通しを立てる必要があるため、経営状況を踏まえた上で使用料改定を検討する必要がある。また、汚水処理原価における汚水処理費用に見合った有収水量を確保するには、水洗化率の向上が必要不可欠であり、未接続者に対して広報又は個別に下水道への接続を積極的にアピールして、水洗化率の向上を図っていく必要がある。企業債残高対事業比率でも言えることだが、法適用及び長寿命化計画の策定によって、管渠の老朽化に対応した更新費用等が明確になり、今後更新費用はもとより財源となる企業債残額も増加することが予想される。事業費及び起債額を抑制するためにも、過剰な投資を避けるとともに投資の平準化を図り、財源の将来見通しを踏まえた上で更新していく必要がある。