地域において担っている役割
病院群輪番制病院として医療圏内の救急医療の一翼を担うとともに、医療圏の急性期医療や、地域がん診療連携拠点病院としての高度医療、公立病院として民間病院では限界のある精神・結核・感染症等の政策的医療を堅持しているところである。
経営の健全性・効率性について
平成29年度経常収支比率では、減価償却費の大幅な減少等により前年度から改善し100を超え、収支黒字となっている。医業収支については全国平均を上回っているものの、100を超えるよう今後も一層の取り組みが必要である。累積欠損金比率は、減価償却費が経常収支を圧迫し、収支赤字が続いた結果、平成28年度まで欠損金が積み上がったが、平成29年度の収支が黒字に転じたため累積欠損金は減少している。今後も収支改善を図り黒字経営を継続するため、地域医療ビジョンとの整合性をとりながら、さらなる医療の質の向上と経営の安定に取り組む。病床利用率については全国平均並みであり、今後も新規入院患者の獲得に向け努めていく。入院については、新規入院患者の確保に向けた取り組みを推進した一方でがん患者の減少により新規入院患者が減少し、手術件数も減少したことで単価が減少、1人1日当たり収益もやや減少した。外来では、患者数は減少したが逆紹介の推進により単価が増加、1人1日当たりの収益も増加となった。今後もさらに地域医療機関との連携を強化し、紹介患者の増加につなげ、収益増加を図っていく。職員給与費対医業収益比率では、医師及び看護師の職員増のほか、非常勤職員の常勤換算数の増加などが影響し、前年度比で増加した。今後も適正な人員配置を検討していく。材料費対医業収益比率については、材料費で外来化学療法における抗がん剤使用増加(薬品費)による増加があり、比率が上昇した。これについては今後も材料費の削減に取り組む。一方で、本院でのがん治療の取り組みの結果であり評価できるものである。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率、器械備品減価償却率を見ても、全国平均、類似団体との比較で10ポイント以上上回っており、平成12年度に建設した病院全体分のほか、建設と同時に導入した医療機器等の老朽化も顕著に表れてきている。今後はこれらに対する修繕も増大することが予想され、収支面では費用の増加が懸念される。1床当たり有形固定資産については、前年度から病床数に増減はないものの、救急外来の改修があり微増したものと考えられる。今後も当院の財政規模を考慮し、施設等の投資計画の見直しを適切なタイミングで行っていく。
全体総括
収益面では入院・外来患者1人1日当たりの収益が伸びており、収益構造は改善しつつある。一方で医業収支比率は96.2%であり、政策的医療などの不採算部門以外の医業収益のさらなる確保のため、新たな収益(診療報酬加算)の検討など今後も収益体質の強化を図り、医業収支の改善を目指す必要がある。費用面では、職員給与費、材料費それぞれの医業収益比率が類似団体と比べポイントは低いが、さらなる費用削減について検討していく必要がある。一方で、有形固定資産等の減価償却率は全国平均、類似団体比較でもはるかに高いポイントとなっており、今後は老朽化による修繕費の増加が懸念される。計画的な修繕の実行により費用を抑制しつつも、一方で機器等の継続的・計画的な更新も実施し、当院の医療の質の維持・向上を図っていく必要がある。