経営の状況について
本市の電気事業は、電気を固定した価格で20年間買い取ってもらえるFIT制度を活用し、事業期間における収支状況を試算・検討した上で事業を実施していることから、将来にわたり安定した経営が可能であると考える。今まで稼働していた太陽光発電所5箇所に加えて、平成30年8月1日からは小水力発電所1箇所が運転を開始している。【収益的収支比率】平成29年度は、小水力発電の運転開始前に地方債の償還が始まったことに伴い、収益的収支比率は単年度収支の黒字を示す100%を下回ったが、小水力発電が運転を開始した平成30年度については、売電収入の増加などを要因とした総収益の増加が、発電所の運営などに伴う総費用や地方債償還金の増加幅を上回ったことから、同比率が100%を超えることとなった。【営業収支比率】大きな機器の故障や自然災害などもなく、発電も比較的安定していることから、一定の売電収入を確保できており、営業収支比率も100%を上回っている。また過去5年間についても100%以上となっており、営業利益を安定的に計上している。【供給原価】分母となる総費用と地方債償還金の合計額が前年度と比較して微増したのに対し、分子となる年間発電電力量については、小水力発電の運転開始などにより、2割近く増えたことから、供給原価がやや減少したものと思われる。令和元年度からは、小水力発電が年間を通じた発電が可能となるため、年間発電電力量が更に増加し、供給原価についても引き続き低下するものと思われる。【EBITDA】EBITDAが前年度比で10倍に増額し、平均値に近い数値まで上昇をしているが、この主な要因としては、運営経費や維持管理などの総費用が前年度と比較してほぼ横ばいに抑えられたのに対して、売電収入の増加に加え、事業全体に係る消費税に還付が生じたことから、総収益が全体として約2,300千円増加し、EBITDAを押し上げたものと考えられる。
経営のリスクについて
【設備利用率】太陽光発電については、全国平均と比べて日照時間が長いという地域特性に加え、包括的施設リース契約による適切な施設管理により、年間を通じて安定した運転ができている。設備利用率については直近の4年間で15%を超えており、平均値及び資源エネルギー庁が発表している太陽光発電(メガ)の設備利用率14%を上回っている。小水力発電については、年度途中の8月から運転を開始したことに加えて、年間を通じて使用している農業用水の流量に変動があることなどからあくまで参考値と考える。発電事業全体では、主な部分を太陽光発電が占めているため、同じような推移となっている。次年度以降については、小水力発電が年間を通じた発電が可能となることから、設備利用率は上昇するものと思われる。【修繕費比率】大規模太陽光発電については、機器等の修繕を含めた包括的な契約となっており、修繕費のみを分別することができないことから修繕費比率は0となっている。また小水力発電についても稼働して間もないこともあり、修繕が必要となる事象も発生していないことから、同じく0となっている。【企業債残高対料金収入比率】本企業債は、小水力発電所の建設に係るもので、売電収入を償還財源としている。企業債残高対料金収入比率が平均値と比べ著しく高いのは、小水力発電の運転開始が年度途中であり、年間を通じた売電収入ではないことが一因となっている。なお、太陽光発電所の建設に要する初期投資については、企業債を活用せず、売電収入からリース料の一部として支払う契約としているため、企業債残高対料金収入比率が算出されていない。【FIT収入割合】「1.経営の状況について」の上段にも記載したとおり本市の電気事業については、FIT制度を活用したものとなっており、全体及び発電型式別に見ても100%となっている。FIT制度の適用期間と太陽光発電の包括的施設リース契約の期間がともに20年間と同じであるため、事業経営上のリスクは低いものと考えられる。FIT制度の適用期間である20年間をひとつの目途としているため、20年経過後の事業運営については不明瞭な部分はあるが、今後の運営状況などから将来の費用対効果について検証しつつ、FIT制度の期間満了までには方針を示したいと考えている。
全体総括
発電事業全体としては、概ね健全な事業運営ができていると考えており、一部数値が悪化しているように見えるものについても、小水力発電所が年間を通じて発電が可能となる令和元年度からは徐々に改善していくものと考えられる。令和2年度中に策定を予定している経営戦略に基づき、経営基盤の強化、経営の健全性の維持に努めることにより、事業を安定的に継続していく必要がある。