経営の状況について
収益的収支比率は61.4%、営業収支比率は63.5%となり、目安である100%を下回った。要因としては、発電設備の根幹となるコンバータにおいて、経年劣化に起因するエラーが頻発し、エラーによる故障停止とその修繕により、6月から10月にかけてほとんど発電による売電収益が得られなかったことがあげられる。また、風況の良い2月においても落雷によるブレード損傷のため風車が稼働できず、売電収益を得られなかった。加えてコンバーター修繕及びブレード修繕の修繕料が高額となったため、平成30年度においては、基金からの繰り入れにより対処した。なお、コンバータの修繕後は設備利用率が20~30%を維持しており、起債の償還も終了していること、基金も十分にあることからも、FIT制度による売電期間内において、今年度の収益的赤字が以後の経営に影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。
経営のリスクについて
起債の償還が平成28年に終了したことで、以降は企業債残高対料金収入比率は0%となり、経営リスクは低下している。しかし、経年劣化や落雷による故障を要因とした風車の稼働停止が長期化することもあり、設備利用率が近年下がってきている一方で修繕費比率は平成29年、平成30年と増加傾向にある。平成30年度はコンバータの修繕や落雷損傷したブレード修繕等の大型修繕があり、特に修繕費比率が高くなった。しかしながら、コンバータを修繕したことでその後の設備利用率が改善し、その他の経年劣化に関しての大型修繕も目途がついていることから、今後の修繕費に関するリスクはこれまで以上に大きくなる可能性は低いと考えている。なお、さらなるリスク低減のため、故障により風力発電機設備が止まってしまった場合の早急な対応、細かなメンテナンス、早めの部品交換を行うことに努める。また、冬季の落雷による風力発電機の故障に備えるため、落雷発生時もしくは、天気予報などで事前に落雷が予想されるときには、予め運転を一時休止して、落雷の影響を低減する運営や保険加入の継続などを行う。FIT制度の期限が終了するまでは100%FITによる売電を継続していくが、令和4年度にはFIT制度の適用が終了する。今後継続して運営するか、撤去するか、リニューアルするかなどの選択肢を決定していく必要がある。
全体総括
風力発電所の運転開始から17年が経過し、平成30年度は経年劣化による故障停止やその修繕により、売電収益の減少や修繕費の増加が生じ、収益的収支比率が100%を下回った。しかしながら、平成30年度に大規模修繕を行い、設備利用率の改善が見られたことや、起債の償還が終了していること、FIT制度により基金の積み上げができていることから、FIT制度による売電期間内においての経営リスクは大きくないと考えている。ただし、当該事業は、1基の風力発電機の売電収入がほとんどの収入を占めており、当該発電機の設備利用率の向上のため、今後とも効果的なO&Mに努める必要がある。