経営の状況について
本県では、球磨川水系の3発電所(市房第一、市房第二、笠振)、緑川水系の3発電所(緑川第一、緑川第二、緑川第三)及び菊池川水系の1発電所(菊鹿)の7箇所で水力発電所と阿蘇車帰風力発電所の計8か所の発電所で発電を行い、九州電力株式会社に電力を供給している。なお、阿蘇車帰風力発電所については、令和元年9月末で民間譲渡を行った。平成30年度は、5月末から市房第一・第二発電所の発電を停止し、発電所リニューアルの現地工事に着手しており、売電収入が大幅な減収となっていることから、各データは共通して影響を受けている。○経常収支比率及び営業収支比率は、83.5%となっているが、これは、リニューアル工事に伴う売電収入の減収によるものである。○流動比率は、700%を超えており短期的な支払い能力を十分確保している。○供給原価は、分母となる供給電力量が天候等により大きく左右されることなどから年度間の変動が大きいが、平成30年度は、リニューアル工事の影響により、全国平均値よりも高額となっている。○EBITDA(減価償却前営業利益)は、荒瀬ダム等撤去に係る特別損失額の影響等により、平均値を下回っている。平成30年度は、リニューアル工事の影響より減少している。
経営のリスクについて
○設備利用率・水力発電は、発電方式、天候、地域特性に大きく左右されるが、平成30年度は、リニューアル工事の影響により下がっているものである。・風力発電は、風況や立地に大きく左右されるが、平成30年度は、異常音が確認された2号機を廃止し、1,3号機(900kW)による発電となったことなどにより、利用率は全国平均を大きく下回った。〇修繕費比率・水力発電は、リニューアル工事に伴い関連設備の修繕費が発生していることから、平成29年度を上回っている。・風力発電については、平成30年度も多額の修繕費・点検費が発生したことから、全国平均を上回った。〇企業債残高対料金収入比率・水力発電については、平成28年度から老朽化した主要4発電所のリニューアル工事に着手しており、平成30年度も企業債を発行していることから企業債残高は増加している。・風力発電については、建設時に発行した企業債の償還が順調に進んでいるが、平成30年度は自主保安停止による料金収入の大幅減のため全国平均を大きく上回った。〇有形固定資産減価償却率・主要発電所である市房発電所及び緑川発電所の4施設は、運転開始から40~50年が経過し、償却率は全国平均を大きく上回る76.7%となっている。このため、現在リニューアル工事に着手している。また、平成8年~13年に運転開始した笠振発電所等3施設の償却率は55.8%となり、全国平均を下回っている。・平成17年に運転開始した阿蘇車帰風力発電所の償却率は69.4%となり、全国平均を上回っている。〇FIT収入割合・水力発電については、7施設のうち小規模な2施設がFIT適用となっており収入割合は10.5%と全国平均を下回っている。今後、非適用5施設のうち主力の4施設については、リニューアル後にFIT適用となる予定である。・風力発電については、平成24年度途中から全収入がFIT適用となっている。なお、令和元年9月末に民間譲渡が完了した。
全体総括
電気事業全体では、風力発電所において、故障等により想定した発電量を確保できず精算面で厳しい状況にあったが、当該地での風力発電事業の継続と(企業局の)経営改善を図るため、(平成30年10月に民間譲渡先を公募し、同年11月に譲渡先を決定。諸手続きにかかる協議を経て)令和元年9月末に民間事業者に引渡し行った。なお、主要水力発電所の老朽化については、リニューアル工事に着手しており、工事完了後は安定した発電量の確保を目指している。現在、平成27年3月に策定した「熊本県企業局経営基本計画(第四期)」に基づき、経営基盤の強化及び安定した事業継続のための計画的かつ効率的な事業運営を進めている。具体的には、以下のとおり。①安定した発電量の確保老朽化した主要水力発電所4施設の発電設備をリニューアルし、安定した運転を継続的に行う。なお、リニューアル工事完了後(令和2年度以降)は随時FITに移行する。②電力システム改革への対応電力システム改革については、今後の制度改正の内容を注視しながら適切に対応する。③荒瀬ダム撤去への取組み、撤去費用の確保ダム本体の撤去工事については、平成29年度末で本体工事等を完了した。