経営の状況について
経常収支比率、営業収支比率ともに単年度の収支が黒字であることを示す100%を超え、1年以内に支払うべき債務の支払い能力を示す流動比率も100%を大きく上回るなど、経営の健全性を確保出来ている。各指標の状況は、下記の通りであるが、令和2年度は、売電単価の上昇やオーバーホール工事のため停止していた銅山川第一発電所が運転を再開したことにより、昨年度の指標を上回るなど、良好な状態にある。○経常収支比率、営業収支比率営業収益は、大部分を構成する料金収入が、売電単価の上昇や銅山川第一発電所の運転再開により増加したことから、前年度より増加した。営業費用は、修繕費、えん堤管理費分担金等の減少により、前年度より減少した。そのため、営業収支は前年度を上回り、経常収支比率、営業収支比率ともに、前年度を上回った。過去5年間の推移を見ても、目標値、類似団体の平均値を概ね上回っており、営業収益が経常収益の90%以上を占めていることから、営業活動から生じる収益で、事業活動全体の費用を賄えており、経営の健全性を確保出来ている。○流動比率流動資産のほとんどを現金及び預金が占め、流動負債は企業債と一時的な未払金等で構成されているため、流動比率は、一時的な未収金及び未払金の状況により変動している。流動比率は、令和2年度は、未払金の増加により、前年度から下落し、類似団体の平均値を下回っているものの、流動資産で1年以内に支払うべき債務を支払うことができるかどうかを示す100%は上回っており、短期的な支払能力は確保している。○供給原価供給原価は、オーバーホール工事実施の有無による経常費用の増減に伴い、変動しているものの、過去5年間では、類似団体の平均値を概ね下回っており、効率的な運営が図られている。令和2年度の供給原価は、銅山川第一発電所の運転再開による、経常費用の減少及び年間発電電力量の増加に伴い、前年度から減少したものの、類似団体の平均値を若干上回った。○EBITDA(減価償却前営業利益)令和2年度のEBITDAは、銅山川第一発電所の運転再開により、前年度から増加したが、肱川発電所撤去に伴う特別損失の計上による影響で、類似団体の平均値は下回ったものの、一時的な要因によるものであり、本業の収益性は安定している。
経営のリスクについて
設備面では、計画的な維持管理に努めているが、令和2年度は、オーバーホール工事の実施により、修繕費比率が類似団体の平均値を上回った。経営面では、料金収入は前年度を上回り、企業債残高対料金収入比率も減少しており経営の健全性を維持している。なお、各指標の状況は、下記のとおり。(設備面)○設備利用率設備利用率は、発電電力量の減少等により、減少傾向にあるものの、目標電力量を定めるなど、計画的な運用を図っている。令和2年度の設備利用率は、前年度を上回り、類似団体の平均値も上回っている。○修繕費比率修繕費比率は、オーバーホール工事の実施の有無により、年度により、ばらつきがあるものの、設備の効果的な維持管理を行っている。令和2年度は銅山川第三発電所のオーバーホール工事等の実施により工事費が増加したことから、類似団体の平均を上回った。○有形固定資産減価償却率銅山川第一発電所1号機や道前道後発電所など、建設から50年以上経過する施設があるため、減価償却の進展に伴い、有形固定資産減価償却率は上昇傾向にあるが、令和2年度は、銅山川第三発電所において、発電機のコイル巻き替えや水車入口弁の更新等を実施したことから、昨年度を若干下回った。(経営面)○企業債残高対料金収入比率企業債残高対料金収入比率は、企業債現在高が、新たな借入を行っていないため、減少傾向にあり、平成28年度以降、類似団体の平均値を下回って推移している。○FIT収入割合収入割合の30%をFIT適用施設による収入が占め、類似団体の平均値を上回って推移している。売電単価(FIT適用施設以外)改定などにより、FIT適用施設以外の電力料金も増加したため、FIT収入割合は、平成28年度に初めて下落したものの、類似団体の平均値を上回っている。
全体総括
愛媛県公営企業管理局では、令和2年度から令和11年度を対象期間とする電気事業中期経営計画を策定し、施設の耐震化率や経常収支比率等などの数値目標を定め、安定した発電を行うための施設の維持や財政基盤強化などに取り組んでおり、施設の耐震化率や売上高経常利益率などの数値目標の達成状況を、毎年度公表している。この結果、経常収支比率や営業収支比率が100%を上回り、設備利用率等も類似団体と比べ良好な状態にあるなど、健全な経営を維持している。しかしながら、FIT収入割合や修繕費比率等が類似団体の平均値と比べ、高くなっていることから、調達期間終了後を見据え、更なる経費節減による収益性の向上や計画的な設備の維持管理に努めたい。