経営の状況について
発電事業については、固定価格買取制度を活用し、20年間の適用期間における収支状況を検討した上で事業実施していることから、将来にわたり安定した経営が可能であると考える。特に大規模太陽光発電事業に関しては、包括的施設リースによる運営を行っていることから、突発的な費用負担等のリスクがなく、今後も健全な運営が期待できる。事業開始以降は、大きな機器の故障や自然災害などもなく、日照も安定していることから、一定の売電収入を確保できており、営業収支比率は100%を上回って推移している。収益的収支比率については、100%を下回ったが、これは平成28年度から3か年にわたり整備工事を行っている小水力発電事業の企業債の償還が、発電所の完成(売電の開始)よりも前倒しして、平成29年度から開始した事に起因するものであり、発電所が完成し、通年で売電を行うようになる平成31年度からは、この状態は解消されるものと思われる。また、供給原価についても、年間発電電力量は前年度実績から大きく変わっていないことから、収益的収支比率と同じ理由により、原価の上昇があったものと推測される。EBITDAについては、平成29年度も前年度に引き続き、減少傾向となっているが、その主な要因として考えられるのは、発電事業全体における収益の増加に伴う一般会計への繰出金(歳出)の増加によるものであり、発電事業としての収益性は確保されているものと考えられる。(収益が悪化しているものではない。)なお、一般会計への繰出については、大規模太陽光発電事業における売電収入などの収入全体から、大規模太陽光発電所に係る包括的施設リース料や電気使用料などの必要経費を差し引く形で算定を行っている。
経営のリスクについて
大規模太陽光発電事業については、機器等の修繕を含めた包括的な契約となっており、修繕費のみを分別することができないことから、修繕費比率が算出されない。また初期投資に要する経費についても、企業債を活用せず、売電収入からリース料の一部として支払う契約としているため、本来企業債残高対料金収入比率が算出されないが、発電事業全体では、小水力発電所の整備工事に伴い、企業債の発行をしており、小水力発電所の稼動が開始するまでの間については、大規模太陽光発電事業による売電収入により、企業債の償還を行うため、数値が算定される形となっている。なお、小水力発電所の稼動開始後は、小水力発電事業の売電収入を財源に企業債の償還を行っていく形となる。企業債残高対料金比率は上昇傾向となっているが、その要因は小水力発電所の整備工事による企業債の発行によるものであり、平成28年度に引き続き、平成29年度も企業債の発行を行ったことから、企業債の残高は増加している。なお、企業債の償還は平成29年度から開始しており、また平成30年度には小水力発電所が完成し、売電を開始することから、平成30年度をピークに比率は減少に転じるものと考えている。再生可能エネルギーに係る発電電力量は、環境的要因に大きく左右されるが、太陽光発電所が5ヶ所すべて稼動を開始した平成27年度からは、大きな機器の故障や自然災害などもなく、日照も安定していることから、年間の発電量も安定して推移しており、設備利用率についても平均値を上回る数値となっている。今後も引き続き適切な維持管理を行いながら、発電施設の安定的で、効率的な運転を行っていくこととしたい。固定価格買取制度の適用期間である20年間をひとつの目処としているため、20年経過後の事業運営については不明瞭な部分もあるが、今後の運営状況から将来的な費用対効果などを検証しつつ、期間満了までに方針を示していきたい。平成30年8月に発電を開始した小水力発電事業についても、太陽光発電事業と同様に収支状況の検討を経て事業着手していることから、特別会計全体として独立採算の原則に基づき、安定的な経営が可能であると考えている。
全体総括
発電事業全体としては、概ね健全な事業運営ができていると考えており、一部数値が悪化しているように見えるものについても、小水力発電所が建設中であったことに起因するものであり、その小水力発電所についても平成30年に完成し、同年8月からは発電を開始した事から、今後は徐々に改善していくと考えられる。なお、本事業の成立は、固定価格買取制度によるところが大きいが、平成32年度を目処に策定を予定している経営戦略の中で、将来的に見込まれる売電収入の範囲内で適正な維持管理等を行い、健全な事業運営ができるよう努めていくこととしたい。