経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率は、総費用の減少により前年度比で上昇している。区域内の新たな土地活用状況に注視しつつ、未接続世帯に対して接続要請を行うなどにより接続率の向上を図り、総収入の根幹である使用料収入の増加を目指す。④企業債は、施設整備のために発行した平成11年度以前と震災復旧のために発行した平成23年度分のみである。償還は、既発行済額に対して6割終えているため、借入残高の総額は年々減少する。⑤経費回収率は、類似団体平均値と比べて高い。前年度と比べ料金収入が減少したが、汚水処理費が抑えられたことから、前年度よりも改善している。料金収入の増加を図るとともに、経費の見直し等を行い、汚水処理費の抑制を図る必要がある。⑥汚水処理原価は、類似団体平均値と比べて低い。年間有収水量が減少したものの、汚水処理費が抑えられたため、前年度比で低下している。接続率の向上による有収水量の増加と併せ、経費見直しによる汚水処理費の抑制を図る必要がある。⑦施設利用率は、類似団体平均値に比べ低い。震災以降、家屋の解体110件、水産加工業や民宿の経営不振などにより家庭及び業務用での使用量が減少しているためによるものと考えられる。⑧水洗化率は、類似団体平均値に比べ低い。未接続世帯の多くが費用負担の面から接続できないという高齢者世帯である。前年比では、接続数の増加により水洗化率が増加している。
老朽化の状況について
処理施設及び管渠は平成10年10月から供用開始したものであり、比較的新しい。処理施設は平潟漁港敷地内にある。平成23年3月発生の東日本大震災において、処理施設は津波の直撃を受け被災した。被災した機器類は震災復旧時に更新を行ったが、その他の部分については更新等を行っていない。更新をしていない機器類や施設は運転開始から20年近くになるため、定期点検を行いつつ、計画的な修繕を図る必要がある。
全体総括
震災以降、水産加工業や民宿は不振に陥るとともに110件の家屋解体があった。これらにより、家庭及び業務における水の使用量が減少したため、汚水処理量が減少し事業効率を押し下げている。地形や震災の関係で新規住宅建設ができる所が限られる。したがって、現在未接続の世帯に対して接続要請を継続して行いつつ、汚水処理経費の抑制を図ることで収益を確保する以外に現時点では方法がない。汚水処理の機器運転方法の縮小も今後の検討課題である。水産加工業・民宿の不振の一因には、風評被害が考えられることから、その対策も求められる。現行制度での汚水処理対象区域は漁業関係区域のみである。隣接区域に住宅団地等が存在するため、制度状況を踏まえつつ住宅団地等への管渠接続について検討したい。