経営の状況について
「経常収支比率」及び「営業収支比率」について、目標値及び平均値を大きく上回っている。これは、一部水力発電所の再生可能エネルギー固定価格買取制度(以下「FIT」という。)の適用により、平成25年度以降電力料金収入が大きく増加したことによるものであり、安定した経営を継続している。「流動比率」は、各年度とも100%以上かつ平均値を上回っており、現金預金で全ての流動負債を賄える状況であり、短期的な債務に対する支払能力を有している。なお、平成30年度に流動比率が低下したが、これは年度末時点における建設改良費の未払金及び、引当金の流動負債への計上額が増加したことなどによるものである。「供給原価」及び「EBITDA(減価償却前営業利益)」について、平成30年度は前年度と比較して、供給原価及びEBITDAは共に増加している。これは、7月の少雨の影響等で河川への流入量が少なかったことで、前年度に比べ水力発電所の発電電力量が少なく、電力料金収入が減少したものの、全体収入においては、山形JR直行特急保有㈱の解散に伴う残余財産分配金などの特別利益の増により、純利益が増加したことによるものである。なお、供給原価は各年度とも平均値を下回っており、EBITDAは平均値を大きく上回っていることから、事業の収益性が高く、効率的な経営を継続している。
経営のリスクについて
【水力発電】「設備利用率」は平均値を上回る数値で推移しており、発電施設の効率的な運用を実施している。なお、平成30年度は7月の少雨等の影響で前年度に比べ発電電力量が減少したため、設備利用率は低下した。効率的な維持修繕の実施等により停電作業期間を短縮し、設備利用率の向上に努める必要がある。「修繕費比率」は年度ごとに数値のバラつきがあるが、平成27年度の数値が平均値を大きく上回っている。これは、平成27年度に大規模な修繕工事を実施したことによるものである。今後、施設の老朽化に伴い修繕費が増加することがリスクとして想定される。安定した経営のため、計画的な工事実施による修繕費の平準化や効果的な修繕方法の検討等が必要である。「企業債残高対料金収入比率」は、平均値より低い数値で推移している。これは近年、新規の企業債を発行していないことから企業債の償還が順調に進んでおり、また平成25年度からFITにより電力料金収入が増加したことによるものであり、健全な経営状況である。「有形固定資産減価償却率」について、各年度とも平均値を下回っている。しかし、一部の発電所や送電設備については、施設の老朽化が進行しており、更新・改修等の対応が必要な状況であるため、耐震化を含めた計画的な更新・改修工事を実施する必要がある。「FIT収入割合」について、平均値を大きく上回る数値で推移しており、FITによる調達期間終了となる令和10年度以降、買取単価が下落し料金収入が減少するリスクが想定される。そのため、安定した収入の確保や、適切な投資計画及び施設維持管理のコスト削減等、FIT期間終了を見据えた経営努力が必要である。【太陽光発電】太陽光発電は平成25年12月から発電を開始しており、「設備利用率」については平成26年度以降は平均値と同程度で推移している。「企業債残高対料金収入比率」は、企業債を発行していないことから、数値が算出されていない。「FIT収入割合」について、全収入がFITで占められており、FITによる調達期間終了後(令和16年1月)、買取単価が下落し料金収入が減少するリスクが想定される。
全体総括
本県の電気事業は、従来からの経営努力に加えてFITの適用により、収益性が高く健全な経営を実施している。しかし、FIT収入割合が高いことによるFIT期間終了後の収益の減少や老朽化した施設の計画的な更新・改修の実施及びその財源の確保等の課題もある。こうした課題に対し、平成30年3月に策定した「山形県企業局経営戦略」に基づき中長期的な視点に立った更なる経営努力が必要である。なお、FIT期間終了後の事業のあり方については、国等の動向を踏まえて今後検討を要する。