経営の状況について
経営の健全性・効率性については、全般的に概ね良好な数値を示している。令和3年度の収益的収支比率・営業収支比率・EBITDAについては、全国平均を上回っており、営業収支比率は、災害対策・会計システム導入等の営業外費用の支出が多くなったことにより、比率が前年より9.8%減少した。次年度以降は、突発的な費用等が発生しなければ、令和元年度以前の推移に改善することが予測できる。収益的収支比率・EBITDAについては、安定した発電稼働期間を確保することができ、売電収入が増加したことから前年より比率が上昇した。高水準の主な要因としては、FIT移行と発電施設の更新によるものであるが、安全で安定した電力供給を維持するため、保守業者と密な連携体制を確立できていることが実務的な見解である。本村では、引き続き現行体制を維持していくこととしている。EBITDAについて、高水準にある主な要因は前述したものと同様であるが、これは現行の維持体制の成果が経営状況に十分反映されている証拠であると言える。平成26年度の発電所更新工事により、良好となった発電効率を今後も維持し、指標値の向上と経営の更なる効率化に努めていきたい。
経営のリスクについて
経営のリスクについては、全体的に概ね健全な数値を示している。当事業では、突発性の高い小規模な修繕に備えるだけでなく、定期的な点検等で生じる中規模工事、あるいは予測できない災害等での大規模工事に備えていく必要があるため、発電所基金積立を実施し、内部資金を確保することで適正な対応を講じることができるよう、現段階からリスクマネジメントを行っている。また、経常的な支出面では大きく変化していないため、総括的な見解としては当事業における経営のリスクは最小であると言える。しかしながら、自然環境の変化による大規模災害における対策が不十分な点があるため、十分な対策を実施する必要がある。収入面からみる経営リスクの分析では、当事業における現行の事業収入内訳はFITによる収入割合が100%を維持し、健全な事業運営が確保されているが、適用期間終了後の事業のあり方については、現時点で方針は定まっていないため、令和3年度に策定した経営戦略や財産投資計画に基づいて、更新投資等に充てる財源確保、費用削減に向けた取り組みを検討する。今後、第5次エネルギー基本計画に沿った情勢の変化や、非化石市場の動向等、様々な可能性を模索し、FIT終了による電力料収入の変動リスクも視野に入れたマネジメントを計画、実施していく必要がある。本村を含む九州管内小水力発電所協議会の中で、より効果的な売電交渉を進めていくための具体的な方策を検討し、安定した売電収入の確保に努めていく。企業債残高対料金収入比率については、初期投資に要する経費において企業債を活用せず、本村の一般会計から長期借入を行い、売電収入で償還しているため、企業債残高対料金収入比率が算出されない。今後とも安全で安定した電力供給を維持していく上で、計画的に施設更新を実施するとともに、自然災等における被害の極小化に向けたリスクマネジメントを検討し、円滑な事業運営に努めていく。
全体総括
令和3年度における全体の各数値については、前年度と比較しても高水準で移行しており、全国平均値からみても良好な値を示している。また、事業収益及び経営リスクにおいても、具体的な損失等に繋がることなく、順調な経営管理ができていると言える。しかし、FIT収入のみであることから、適用期間終了後の経営において、同水準以上の良好な状態を維持していくことができる環境を、現段階から組み立てておく必要があると考える。また、熊本地震や大寒波等の、異常気象や自然災害が多発している現在において、今後も同様の災害が起こりえる状況が想定される中で、安全で安定した事業運営が維持できるリスクマネジメントを講じる必要がある。現状に満足することなく、先を見通した取組を実施するとともに、具体的な経営戦略を策定し、より効果的な発電事業となるよう努めていく。