地域において担っている役割
救命救急センターを併設する南予地域の急性期基幹病院として二次・三次救急医療を実施しており、圏域の救急医療体制の中核である。加えてがん診療や災害医療をはじめとする政策的医療や結核・感染症医療等の不採算医療を担っているほか、地域で唯一の総合病院として多様な疾病に対応している。また、臨床研修病院として医療福祉に貢献できる人材育成を行っている。
経営の健全性・効率性について
経常収支、医業収支ともに黒字決算を継続しているものの近年は職員数の増加に伴う給与費の上昇により利益率が低下している。累積欠損金の状況は類似団体と比較して非常に良好であるものの会計制度改正による引当金の計上義務化により、退職手当引当金の計上不足額を平成30年度まで分割計上することとしているため欠損金は増加しているが、平成31年度以降は解消に転じる見込みである。診療収入について類似団体との比較で顕著な点は入院単価の低さである。平均値より4,000円程度低い理由として、当院の看護配置基準10対1に対して同規模病院は多くが7対1であるためであると考えられる。ただ、一方で病床利用率は当院が15ポイント程度高い水準にあるため収益ベースでは類似団体よりも高い水準にある。近年は診療収入の増加により増収傾向にあるものの、給与費、材料費の増加により減益傾向にある。
老朽化の状況について
平成21年度に新病院としてオープンしたため施設全体としての減価償却率は低い水準にある。一方で機械備品では医療機械の耐用年数は概ね6年前後であり、改築後に整備した物品についても耐用年数を経過するものがあり、26年度からの3年間では10億円超の医療機械整備を実施している。機械備品減価償却率は類似団体より10ポイント程度高い水準にあるものの医療機械については専門の職員による管理のもと予防保全等の長寿命化策を講じ安全かつ効率的な運用を行っており、5ヶ年単位の投資計画をまとめた上で優先順位を基に毎年度見直しつつ整備している。
全体総括
平成28年度決算においては概ね良好な経営状況であるといえる。給与費をはじめとする費用が増加しているものの収益の増加により大幅な減益には至っていない。今後も在院日数の短縮と病床利用率の維持に努め、より一層の収益確保につなげていく。給与費が増加しているのは7対1看護配置の実現と慢性的な職員不足による労働環境改善を目的に積極的な看護師採用を行っているためであり直近3ヶ年で約20名を増員している。当院就職を条件にした債務免除特約付奨学金の貸与や合同就職説明会への参加、地元の看護学生を対象にした職員との交流会開催など様々な確保策を講じており、今後さらなる人口減少社会が到来する中で地域医療を支える医療従事者の確保は喫緊の課題であり継続的に取り組むものである。また、地域の医療ニーズに応えるために計画的・効率的な設備投資を行い安全安心な医療の提供と安定的な利益確保を目指す。今後、少子高齢化による人口動態の変化が及ぼす医療需要の変化に対応するため、地域医療構想に基づく医療機能の見直しを検討しつつ、引き続き利益確保に努め安定的な企業経営を行い、南予地域の中核病院としての責務を果たすものである。