経営の健全性・効率性について
経常収支比率と料金回収率はともに100%を下回っている。これは、料金算定時に過年度未処分利益剰余金を活用して料金を低く設定したために生じた収入不足、また、本年度の水道事業統合に伴って、退職給付引当金を末端給水事業と本事業で折半したことにより生じた支出増加によるものである。企業債残高対給水収益比率は類似団体と比べ高くなっているが、創設事業(S61~H20)完了後の新規借入はなく、企業債残高は発行総額の約26%まで減少しており、償還を着実に実施している。給水原価は資産が比較的新しいことから支出に占める減価償却費の割合が大きいため、類似団体と比べて高くなっている。施設利用率は前年度より高くなっている。これは、水道事業統合に伴い、末端給水事業の浄水場を一部廃止したことにより、本事業からの供給水量が増加したことが要因である。末端給水事業は今後5か所の浄水場の廃止を計画しており、本事業の供給水量に対する依存度は増加し、施設利用率はより高くなっていくものと思われる。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率が類似団体と比べて低いのは、供給開始が平成13年度であり施設が比較的新しいためである。なお、管路については、法定耐用年数を迎えたものがなく管路経年化率及び管路更新率はともに0%である。
全体総括
料金低減を目的として、未処分利益剰余金の活用により収入不足を補う財政計画としているが、実績としては経費節減等により収入不足額を圧縮できており、また、累積欠損金もないことから、経営は概ね健全であると判断できる。しかし、経常収支比率及び料金回収率が、供給開始以降ほとんどの年度で100%を下回っていることから、適正な料金設定が急務である。また、給水原価について近年高い傾向が続いているが、末端給水事業の浄水場の廃止を進め、本事業からの供給水量を増やすことで給水原価の低減を図る考えである。今後は、令和3年3月に策定した「佐賀西部広域水道企業団新水道ビジョン」に掲げる『安全で安定した水を確かな技術・運営力で継続的に』に基づき事業を推進していく。