経営の状況について
平成29年度は、水力発電における出水率が高かったことに加え、高森高原風力発電所の運転開始などにより電力料収入が増加した一方で、費用では人件費の増加や高森高原風力発電所運転開始による減価償却費の増加などがあったものの修繕費の減少もあり微増に留まったことなどから、経常収支比率、営業収支比率ともに100%を超え、安定した経営を継続しています。また、流動比率は100%を超え高い水準で推移しており、短期的な債務の支払い能力は確保されています。なお、平成28年度以降、流動比率が大きく下がっていますが、これはいずれの年度も高森高原風力発電所(H30.1.1運転開始)の建設工事費の支払いが年度をまたいで行われたために会計処理上、流動負債が増加したことなどで下がったものです。供給原価は全国平均よりも低い一方で、減価償却前営業利益(EBITDA)は、全国平均より高く、高森高原風力発電所の運転開始に伴い平成28年度からさらに増加しているなど、事業の収益性は高く、効率的な経営を行っています。
経営のリスクについて
【水力発電】設備利用率は、全国平均よりも高く、40%を超え安定的に推移しており発電施設の効率的な運用が行われています。修繕は長期間の修繕等計画に基づき実施していますが、平成29年度において修繕費率が前年度を下回っているのは、大規模修繕がなかったことによるものです。経営状況では、企業債残高対料金収入比率が順調に減少しており、企業債の償還は順調に進んでいます。一方で、有形固定資産減価償却率は全国平均と同様に増加傾向にあり、償却対象資産の減価償却が進んできていることから、今後、施設の再開発等の検討が必要となっています。そのほか、FIT適用発電所の適用満了(H46.6)までには期間があることや、FITの収入割合は6%程度と全体に占める割合は少ないことなどから、FIT収入が変動するなどによる経営のリスクは現在のところ少ないものと思われます。以上から、水力発電の経営のリスクは少ない状況にあります。【風力発電】(平成30年1月高森高原風力発電所運転開始)設備利用率が大きく低下していますが、設備利用率は最大出力で1年間(24時間×365日)発電した場合の発電電力量に対する割合であるため、年度途中から運転を開始した高森高原風力発電所では、運転期間が3か月と短かったことが影響したものです。なお、稲庭高原風力発電所は、平成29年度も設備利用率は22.7%と20%台を維持しているほか、高森高原風力発電所でも、運転開始からの3か月間で見ると設備利用率は29.1%と、いずれも全国平均を上回っています。また、企業債残高対料金収入比率、有形固定資産減価償却率ともに大きく変動していますが、いずれも高森高原風力発電所建設に伴う新たな企業債の借入及び償却資産の取得などの影響によるものです。なお、全収入がFITで占められていますが、稲庭高原風力発電所では、FIT適用満了(H33.12)が近づいており、再開発の可能性を含め今後の事業の方向性を検討しています。【太陽光発電】(平成26年11月運転開始)平成26年11月に運転開始していることから故障は少なく、設備利用率は全国平均を上回っているなど収入は安定し、また企業債の発行もなく経営状況は良好であり、現在のところリスクは少ない状況にあります。なお、全収入がFITで占められており、FIT適用満了(H46.10)後は収入が大きく変動するリスクを抱えているため、今後、事業のあり方を検討する必要があります。
全体総括
平成29年度の岩手県の電気事業は、高森高原風力発電所が運転を開始し、本県の電力自給率の向上に貢献したほか、長期経営方針(H22~H31)及び中期経営計画等に基づき取組を進め、安定した経営を維持しています。今後は、平成31年度の売電に係る長期基本契約満了に伴い、新たな売電契約に向けた検討を進めるとともに、既設発電所に係る再開発の検討のほか、引き続き新規発電所の建設や、東北電力との共同の取組である『いわて復興パワー』により、震災復興及びふるさと振興に寄与するなど地域貢献にも取り組んでいきます。