地域において担っている役割
不採算地区に立地する甲賀保健医療圏の中核病院として、2次救急医療、災害拠点病院、地域医療支援病院、地域がん診療病院としての役割を担っている。5事業に対する医療の確保として、救急医療では、圏域内の救急告示病院との連携・役割分担のもとに救急患者の受入れを行い24時間365日対応の中心的役割を担っている。災害拠点病院の面では、災害対応作業部会を中心にDMAT隊と協働し院内での災害訓練の実施や他県での研修に参加している。地域がん診療病院の面では、5疾病に対する主な取組みとして、地域がん診療連携拠点病院の再指定を受けるための準備を進めている。地域包括ケアシステムの推進では、入院前から退院に向けての支援が円滑となるように、退院支援センターや、訪問看護等の居宅介護事業を中心に地域の医療関係者との連携を行っている。また昨年度に引き続き、感染拡大による新型コロナ感染症(以下、コロナと省略する)入院患者の受け入れ病床を今年度は26床まで増床し、第2種感染症指定医療機関としての役割を果たしている。
経営の健全性・効率性について
入院患者数は、コロナの感染拡大(デルタ・オミクロン株の流行)と受入れ病床増床による影響で病床利用率も前年度より低下し両平均値(全国平均及び類似病院平均値)を下回った。入院及び外来患者1人1日当たり収益は年々上昇しているが、昨年以上にコロナ感染拡大の影響は大きく、両平均値には届いていない。材料費比率は、コロナの感染対策物品・検査関連の費用が増加したが、国県からのコロナ関連補助金、価格交渉による費用削減努力等により両平均値を下回っている。職員給与費比率はコロナ関連業務の増加に伴う人材の投入により手当等が増加したが、国県からの補助金等で前年度よりも減少し両平均値を下回っている。医業収支は入院患者数はコロナの感染拡大の影響により減少したものの、手術・検査・リハビリの増加と内視鏡・循環器手術の増加等により診療単価が上昇し収入増につながった。外来患者数は救急患者受入れ増加や化学療法の増加等で収入増となり医業収支は両平均値より上回っている。経常収支比率は前年度より改善しているが両平均値には届いていない。
老朽化の状況について
病院建物は移転新築後まだ9年しか経過していないため、有形固定資産減価償却率は両平均値を下回っている。器械備品減価償却率は、令和3年度はコロナ対策物品も含め、多くの備品を購入しており、また償却済の多くの備品を除却していることや、独法後、会計上資産として引き継がれなかった資産を2年間かけて1円まで償却する期間が令和3年度末で終了したこと等により前年度より減少し、両平均値を下回った。1床当たり有形固定資産は前年度より数値は上昇したが、両平均値よりは下回っている。今年度は、エアコン室外機保全工事(第二期)や、オンライン資格確認システム、内視鏡システム、関節鏡カメラ、電動ベッド等の医療機器の整備を行った。令和4年度は、院内照明LED化整備、エアコン室外機保全工事(第三期)、汎用超音波画像診断装置、超音波白内障手術装置等の医療機器の整備を行う予定である。
全体総括
今年度は独法化3年目の経営方針として以下の3点に重点をおいて取り組んだ。①「断らない救急を目指す」では、24時間365日の2次救急患者の積極的な受入れを行った。甲賀広域行政組合消防本部と救急搬送受入れにあたり積極的な意見交換を行い、救急搬送受け入れ率は99.4%を達成した。②「看護師のQOL向上」では、看護師の負担軽減のために継続した労務管理を実施したが、コロナ拡大の影響により、業務負担も増加し、離職率は13.4%と前年度より増加した。引き続き、看護師確保の多様な手段の実施と業務負担軽減につながる労務管理に取り組んでいく。③「新型コロナ対策」では、院内では感染症防止対策として体温チェック、シールド設置、職員への感染防護具の着用義務を進め、入院患者への面会制限等も行った。院外では、両市や地域の医療機関と連携を進め、院内外でのワクチン接種、集団接種に多く従事した。コロナ対策では、保健所、県COVID-19災害コントロールセンターと連携しスムーズな受け入れを行った。令和4年度は中期計画最終年度(4年目)としてさらなる経営面の改善に取り組むと共に、コロナ感染症終息後も地域に必要な医療を提供していく。