地域において担っている役割
当院は、椎葉村内で唯一の病院であり、さらに近隣市町村の最も近い医療機関と距離が30km以上離れていることなどから、本県のへき地医療拠点病院に指定されている。このような状況のため、通常診療のほか、24時間365日体制の救急対応、遠方の地域に出向く巡回診療、訪問診療及び看護、各種予防接種や健診、福祉施設の回診など、不採算であっても担わなければならない業務を多数抱えており、これらの医療活動を継続させていく必要がある。また、新型コロナウイルス感染症についてはワクチン接種に対応しているほか、診療・検査医療機関に指定され、患者への対応もしている。
経営の健全性・効率性について
患者数の動向については、新型コロナウイルス感染症の流行状況に大きな影響を受けているが、令和3年度においては、入院患者が前年度比で14.6%の増となったのに対し、外来患者については人口減少の影響もあり、2.8%の減となった。医業収益については、7.0%の増となったが、要因には入院収益の増と、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種の実施による公衆衛生活動収益の大幅な増があげられる。類似団体と比較して、病床利用率や患者1人1日あたりの収益は低く推移している一方で、累積欠損金比率、医業収支比率については良い状況で推移している。
老朽化の状況について
現在の施設は、平成7年の新築移転から27年以上経過しており、耐震上は問題ないものの、施設や器械設備の一部に更新時期を迎えていることから、公共施設等総合管理計画の個別計画に基づき、年次計画的に改修や更新に取り組んでいる。また、有形固定資産や器械備品の減価償却率については、類似病院の平均値を上回っており、老朽化が進んでいる。毎日使用するような一部の設備等は更新しているが、当面は定期点検をしながら適切な維持管理に努めていく方針であり、大規模改修等の予定はない。
全体総括
本村は、中山間地域の過疎化が進む自治体であり、面積が広大で公共交通機関も十分でないことから、患者は本村に居住している住民が中心となっている。したがって、患者数の大幅な増加は見込めないものの、へき地医療拠点病院として多機能な役割を果たしていかなければならない。経営面として、令和3年度は総収益が増加し黒字化となったが、患者数や医業収益はやや減少傾向にあり、感染症等の影響も大きく受けるなど先行き不透明な状況が続いている。令和3年度決算で、現金預金を含む流動資産が負債を大きく上回っているため、財政健全化比率や公営企業会計における将来負担比率については基準内であり、企業債も新たな発行はなく、令和6年度にすべての償還が終了する予定である。