地域において担っている役割
当院は隠岐医療圏のうち、島前地域(西ノ島町:人口約2,500人、海士町:人口約2,230人、知夫村:人口約600人)において、唯一の入院施設を有する医療機関として、急性期医療から在宅医療まで幅広い診療にあたっている。3町村にはそれぞれ無床の国保診療所(西ノ島町:浦郷診療所、知夫村:知夫診療所、海士町:海士診療所)があり、地域医療支援ブロック制の拠点として、当院から医師の派遣および、代診等を行っている。
経営の健全性・効率性について
病床利用率は減少傾向にあるが、類似病院平均値を8.4%上回る状況を維持できていることから、医業収支比率についても安定して同平均値を上回っている。経常収支比率については、入院患者減に伴う収益の減により、前年に続き100%を下回る実績となった。一方で累積欠損金比率については、同平均値より大幅に低い水準にて経営を維持している。患者1人当たりの収益については、入院・外来ともに同平均値を下回っていることから、今後は病床機能の見直しや加算の取得に向けた取り組み等が必要である。
老朽化の状況について
当院の建物は主に3つの区画(①旧館・昭和61年建築、②新館・平成13年増改築、③リハビリ棟・平成25年増改築)から構成されている。令和5年度末で旧館区画が築38年、新館区画が築23年を経過するなど老朽化が進んでいることから、有形固定資産減価償却率は平均値を上回っており、今後も増加傾向が見込まれる。器械備品減価償却率についても、診療に支障がない限り耐用年数経過後も使用している機器が多いため、同平均値より若干高い水準で推移をしている。今後、建物については長寿命化に向けた対策を検討するとともに、建替えについては、将来における地域ニーズの把握に努め、関係機関と協議、検討を行っていく。
全体総括
当院は、離島という地理的条件や採算等の面から、民間による医療の提供が困難な不採算の地域に立地し、地域唯一の入院施設を持つ医療機関として地域医療の中心的な役割を果たしている。令和5年度は入院患者の減少に伴う収益減により、経常収支比率において100%を下回る決算となった。コロナ禍(令和2年度)以降、患者数が減少傾向となっており、今後も厳しい経営環境が見込まれるため、令和5年度に策定した「隠岐島前病院経営強化プラン」を基に、医師・看護師をはじめとする医療スタッフの確保を図った上で、適正な収入と経費の縮減による、安定した病院経営に努めていく。