地域において担っている役割
中山間へき地において、医療・介護・保健・福祉の中核を担っており、公立診療所や町内福祉施設などと連携し、健康教育・予防医療・健康診査・リハビリテーション・在宅支援などを含めた地域包括ケアの中心であるとともに、その牽引役である。また、救急告示病院に指定されており、医師が常駐し、いつでも必要な医療を受けることのできる医療機関として、地域住民の健康を維持し、質の高い生活を送るための大きな支えとなっている。さらに、地域医療分野における初期臨床研修医の受け入れや総合診療専門研修における専攻医の受け入れを行うなど地域で活躍できる医師の育成にも取り組んでいる。
経営の健全性・効率性について
収入の中心となる入院収益は、経常損益の分岐点にもなっている病床利用率70%を堅持することを目標として設定している。コロナ禍以前は70%前後で推移していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により利用率が60%前後まで下がっている。経費については、医業費用のうち固定経費である人件費、委託料(機器保守等)、減価償却費等が大きなウエイトを占めている。これらの経費を抑えることで、利益の増加を図ることは可能であるが、一定水準の医療を継続していくためには必要な経費となるため、安易に削減は行わず、スタッフとともに検討を行いながら、効率的な事業運営、経費節減の実施に努めていく。なお、材料費については、入院の減少により減少傾向にある。電子カルテシステムやCT装置などの医療機器については病院運営に欠かせないものとなっているが、病床数の少ない小規模病院では、規模に比べその負担が大きい。
老朽化の状況について
現在の病院は、平成12年5月に新築し、20年余りが経過している。空調・給水設備などの附帯設備については、経年劣化や耐用年数の経過に伴い順次更新をしているが、ここ数年設備の故障等が頻発し、多額の改修費用を必要としている状況である。医療機器については、耐用年数や使用状況により、順次更新を行っているところである。1床当たり有形固定資産については、類似病院平均値を大幅に上回っているが、これは平成12年度に実施した新病院建設、その後の病院職員住宅建設、併せて近年は電子カルテシステムの約5年毎の更新による増加が大きな要因となっている。過大な投資は減価償却費の増大にもつながることから、高額機器等の整備に当たっては経営とのバランスを考慮し、計画的な更新を行い負担の平準化に努めている。
全体総括
身近な地域のかかりつけ医療機関であるとともに、救急・入院を担っており、当地域から同様の機能を有する近隣の医療機関までは車で30分以上を要するため、当地域において必要不可欠な存在となっている。地域での役割を果たすためには、現在の規模や機能を維持していくことが望ましいが、少子高齢化によるさらなる人口減少等により、運営状況は厳しさを増していくことが予想され、さらに効率的な運営が求められる。他医療機関や町内福祉施設との地域連携機能の強化による入院増加や検診(健診)事業の拡大等により収益増加に努めるとともに、後発薬への切替えによる薬品費の節減や各種委託契約の見直しによる委託費用の節減等、より一層の経費の見直しを進めていく必要がある。