地域において担っている役割
牡鹿半島において、地域医療を担う唯一の病院として内科、外科及び歯科の3診療科を標榜している。外来及び入院の一般診療のほか、24時間体制で救急患者の受入れにも対応している。また、一般健康診断業務のほか、各種予防接種事業への協力、校医として小中学校・保育所へ赴き、内科及び歯科の定期健康診断を行うなど、学校保健分野における公衆衛生活動も担っている。その他、各種施設の嘱託医として、疾病の予防や治療にも対応するなど、地域に密着した医療を提供している。
経営の健全性・効率性について
医業収支比率については、地域の人口減少に伴い病床利用率が低迷し、入院収益が減収する一方、新型コロナウイルス感染症の対応などにより、外来収益等の医業収益が対前年度比で14百万円増となったことなどから、医業収支比率は3.1ポイント増となった。しかし、医業活動による医業収益だけでは安定した病院経営は依然として困難であり、経常収支比率では対前年度比3.1ポイント減と悪化し、一般会計からの繰入れに依存せざるを得ない状況が続いている。累積欠損金比率については対前年度比で20.8ポイント減少したものの、欠損金額を縮小させていく経営努力を続けていかなければならない。
老朽化の状況について
有形固定資産については、建物の竣工から19年目となり、有形固定資産減価償却率は緩やかな増加傾向となっている。施設・設備の改修は、過剰投資を避けて計画的に実施し、コストを抑制していかなければならない。なお、1床当たり有形固定資産が類似病院平均値よりも5割程度高くなっているのは、平成22年に許可病床数50床から25床へと減床したことによるものである。器械備品減価償却率については、対前年度比で5.7ポイント上昇しており、医療機器等が老朽化傾向にある。このため、優先順位を付けるなどして、計画的に更新していく必要がある。
全体総括
本院が所在する牡鹿地域は、人口減少が続く過疎地域にあり、現在の人口は2,165人(令和4年11月末現在)と東日本大震災前の4,533人(平成23年2月末)と比較すると、半分以下に減少し、この傾向は今後も継続していくものと思われる。これに伴い、患者数も同様に減少傾向にあり、安定的な医業収益の確保が課題となっている。また、医師をはじめとする医療スタッフについても充足しておらず、医療人材の確保が困難な状況となっている。24時間体制で救急患者を受け入れるなど、急性期医療も担う牡鹿地域唯一の病院として、その役割は大きく、地元住民が健康を維持しながら安心して生活ができるように、関係医療機関等と連携を図りながら、地域医療提供体制を維持できるよう努めていかなければならない。