経営の状況について
経常収支比率、営業収支比率ともに単年度の収支が黒字であることを示す100%を超え、1年以内に支払うべき債務の支払い能力を示す流動比率も100%を大きく上回るなど、経営の健全性を確保出来ている。各指標の状況は下記の通りであるが、平成28年度は、全ての指標が類似団体の平均値に比べ、良好な状態にある。○経常収支比率、営業収支比率営業収益の大部分を構成する料金収入は、平成27年度の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)対象となる畑寺発電所の運転開始や、平成28年度の売電単価(FIT適用施設以外)の改定などにより、増加傾向にある。営業費用は、大部分を占める水力発電費が、オーバーホール工事などの影響により、平成26年度、27年度に増加したが、平成28年度は減少した。これにより、平成28年度は、経常収支比率、営業収支比率ともに、前年度を上回った外、過去5年間も、目標値、類似団体の平均値を概ね上回っている。営業収益が経常収益の90%以上を占めていることから、営業活動から生じる収益で、事業活動全体の費用を賄えており、経営の健全性を確保出来ている。○流動比率流動資産のほとんどを現金及び預金が占め、流動負債は企業債と一時的な未払金等で構成されている。流動比率は、一時的な未収金及び未払金の状況により変動しており、平成28年度は、未払金の増加により、前年度に比べ低下したが、流動資産の増加や企業債残高の減少により、平成27年度以降、類似団体の平均値を上回って推移しており、短期的な支払能力を十分確保している。○供給原価供給原価は、経常費用の増加及び年間発電量の減少により、上昇傾向にあったものの、平成28年度は、経常費用の減少により、下落した。概ね類似団体の平均値を下回って推移しており、効率的な運営が図られている。○EBITDA(減価償却前営業利益)平成28年度のEBITDAは、営業収益の増加及び営業費用の減少により、純利益が前年度を上回ったことから、前年度から大きく増加した。類似団体の平均値も概ね上回って推移しており、本業の収益性は安定している。
経営のリスクについて
設備面では、計画的な維持管理を行っており、経営面でも、料金収入の増加や企業債残高対料金収入比率の減少など、健全性を維持している。しかしながら、FIT収入割合が類似団体の平均値を上回っており、一部施設のFIT適用期間が平成33年度に終了するため、今後の経営への影響を考慮する必要がある。なお、各指標の状況は、下記のとおり。(設備面)○設備利用率最大出力合計は、畑寺発電所の運転開始により、平成27年度に増加した。設備利用率は、発電電力量の減少等により、減少傾向にあるものの、目標電力量を定めるなど、計画的な運用を図っており、類似団体の平均値を上回っている。○修繕費比率修繕費比率は、平成26年度、平成27年度のオーバーホール工事の実施に伴う上昇など、年度によりばらつきがあるものの、効果的な維持管理を行っており、類似団体の平均値を下回って推移している。○有形固定資産減価償却率銅山川発電所第1号機や道前道後発電所など、建設から50年以上経過する施設があるため、減価償却の進展に伴い、有形固定資産減価償却率は上昇傾向にあるものの、類似団体の平均値を下回って推移している。(経営面)○企業債残高対料金収入比率料金収入は増加傾向にあり、企業債現在高は、年々、減少しているため、企業債残高対料金収入比率は、平成28年度には、類似団体の平均値を下回った。○FIT収入割合収入割合の30%をFIT適用施設による収入が占めている。FIT収入割合は、料金収入(FIT適用施設以外)が増えたため、平成28年度は減少したものの、平成25年度以降、類似団体の平均値を上回って推移している。
全体総括
愛媛県公営企業管理局では、平成22年度から31年度を対象期間とする電気事業中期経営計画を策定し、安定した発電を行うための施設の維持や財政基盤の強化などに取組んでおり、施設の耐震化率や売上高経常利益率などの数値目標の達成状況を、毎年度公表している。この結果、設備面では、設備利用率や修繕費比率など全ての指標において、類似団体と比べ、良好な状態にあり、経営面も、経常収支比率や営業収支比率が100%を上回るなど、健全性を維持している。しかしながら、FIT収入割合が類似団体の平均値と比べ、高くなっていることから、調達期間終了後を見据え、更なる経費節減を図り収益性の向上に努めたい。