経営の状況について
島根県の電気事業は、13の水力発電所、2つの風力発電所、3つの太陽光発電所を運営しており、近年は、太陽光発電所の建設や小水力発電所の開発とともに、老朽化した既設水力発電所のリニューアル工事(FIT適用)にも積極的に取り組んでいます。電気事業の経営状況は良好であり、健全な経営を行っています。現在進行中のリニューアル工事完了後は、さらに高い収益性が確保されることが見込まれます。左記指標のうち、「経常収支比率」「営業収支比率」「EBITDA」がH28年度に上昇していますが、主な要因としては、水力発電所リニューアル工事の一部完了によるFITへの移行及び風力発電所における故障停止時間の減少による収益の増加によるものです。「流動比率」については、健全性の基準である100%を超えており、十分な支払い能力を保有しています。「供給原価」について、H28年度はほぼ横ばいですが、全国平均値より高い水準にある要因は、リニューアル工事による停止及び発電規模が小さいことによるものです。
経営のリスクについて
水力発電については、FIT制度を活用し、長期的に安定した発電を行い経営基盤の強化を図るため、水力発電所のリニューアル工事や小水力発電所の新規開発に取り組んでいます。H28年度は2つの発電所のリニューアル工事が完成し、FIT適用となりました。この取り組みにより、「修繕費比率」「有形固定資産減価償却率」が低下し、「FIT収入割合」「企業債残高対料金収入比率」が上昇しました。なお、「設備利用率」は全国平均値及び一般的な設備利用率(45%)と比べて高い水準にあり、効率的に運用が図れています。風力発電について、H28年度はメンテナンス体制強化の効果が表れ、設備利用率が改善しましたが、H27年度に発生した故障に対する修繕対応により、設備利用率の改善は限定的でした。この修繕費支出の影響で「修繕比率」が全国平均値と比べ高くなっています。風力発電の「設備利用率」は、施設の技術的進歩が加速度的に進んだため、設置年次により差異が生ずるものですが、直近の一般的な設備利用率(20%)との比較では、低い水準にあります。設備利用率の向上は、安定的な経営につながるため、引き続き改善に努めます。なお、「企業債残高対料金収入比率」が全国平均値と比べて高く、「有形固定資産減価償却率」が全国平均値と比べて低い要因は、他団体と比較して設置年次が新しいことによるものです。太陽光発電については、H26年度からH29年度にかけて4発電所を順次、建設しているため、各比率の年度間変動が大きい状況ですが、全発電所稼働後には一定の数値に収束する見込みです。(江津浄水場太陽光:H26年3月運転開始、江津工業団地太陽光および三隅港太陽光:H28年3月運転開始)太陽光発電の「設備利用率」は地域特性や設置年次より差異が生じるものですが、H28年度は天候に恵まれたため、全国平均値及び一般的設備利用率(14%)を上回る結果となりました。他団体と比較して設置年次が新しいことから、「企業債残高対料金収入比率」は全国平均値よりも高く、「有形固定資産減価償却率」は全国平均値より低い水準です。また、H28年度はほとんど故障も無く、結果として「修繕比率」は全国平均値より低い数値となりました。水力、風力、太陽光ともにFIT収入割合が高く、FIT適用期間終了後は電気料金の動向が不透明なため、留意が必要です。
全体総括
H28年3月に策定した「島根県企業局経営計画」を着実に実行し、地域の資源である水力や風力、太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電の拡大に取り組んでいきます。あわせて経費の縮減と安定的な収入の確保に努め、引き続き経営基盤の強化に努めます。風力、太陽光発電のFIT適用終了後の事業のあり方については、現時点で定まっていません。FIT適用終了以降の収支見通しや、島根県における再生可能エネルギー導入への貢献等を考慮し、検討していきます。