地域において担っている役割
国保京丹波町病院は、昭和30年5月の開設以来、開業医のいないこの地域のかかりつけ医的な役割を担っており、病床機能を有し、救急対応や公衆衛生活動を提供し地域医療を守り続けている。また、在宅医療も推進し、医療・介護・保健・福祉を継続的かつ一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の拠点病院の役割を担い、地域住民のくらしを守っている。(本分析には国保京丹波町病院と町直営の3診療所が含まれるが、病院が唯一、病床を運営し、会計規模においても8割以上を占めるため、全体として、主に国保京丹波町病院の分析となっている。)
経営の健全性・効率性について
患者数について、入院事業は病床利用率が57.3%と、平成30年度の大幅な落ち込みから令和元年に急回復して以降、一定の水準で維持しており、今年度は類似病院平均値をも上回った。一方、外来事業は患者数が対前年度比16.1%の大幅減となった前年度に対し、2.7%と微増の回復に留まった。なお、国保京丹波町病院単独では5.1%の増となっているが、これには新型コロナに対する発熱外来の患者数が寄与している。収益面では、入院事業は昨年度に続き内科常勤医師2名と内科専攻医1名の体制が患者確保、病床利用率の向上に繋がったことと、2025年問題や地域的ニーズに応えて導入した地域包括ケア病床の稼働向上により、患者一人一日当たりの入院収益が対前年度比で3.1%増の27,896円まで伸びたことが寄与し、6.7%の大幅増収となった。外来事業も患者数が対前年同月比で12ヶ月通じて増となったことが寄与し、3.7%の増収となった。費用については依然として人件費のウェイトが大きいが、昨年度の91.7%から更に改善し90.5%となり、類似病院平均値との乖離も微増に留まった。また、平成27年度導入の電子カルテシステム等の企業債償還が終了したため、償還金が対前年度比で41.7%と大幅減となった。この結果、経常収支比率は平成27年度以来の100%を超え、黒字となった。新型コロナウイルス感染症で先が見通せない中、今後も常勤医師の確保を維持し、患者数の増加と職員給与費等経費の削減に注力しないといけない。
老朽化の状況について
取得価格の全体に占める割合の大きい国保京丹波町病院の建物は平成16年に新築した鉄筋コンクリート造のため、耐用年数が長く有形固定資産減価償却率は低い水準である。一方、医療機器が多くを占める器械備品減価償却率が毎年上昇しているのは、高額な機器を修繕しながら少しでも使用期間を延ばして経費の節減に努めているためである。結果、1床当たり有形固定資産の額は緩やかに償却が進む。
全体総括
コロナ禍にもかかわらず、3年連続で入院収益を維持できたことは大きな成果であった。その要因は、医師確保の努力が実り、国保京丹波町病院に内科常勤医師2名と内科専攻医1名の体制を確保出来たことにより病病、病診、介護系施設との連携が円滑に進んだ結果、病床稼働率を昨年度水準に維持出来たためである。また、地域包括ケア病床の高い稼働が入院単価が上昇したことも大きい。入院事業には施設基準に沿った人的な医療資源を多く投入していることから、病床稼働率や入院収益の上昇が経営改善に直結することになるたいへん厳しい構造だが、ひとつの結果として形となって表れた。一方、新型コロナの対応に追われつつ、外来患者数の回復の道のりが遠いことも知らされた1年となった。引き続き、医師確保に努力し、経費節減に努めることで、新公立病院改革プランに沿った健全経営に取り組んでいく。