地域において担っている役割
当市では、地域医療構想を踏まえた「市立柏原病院新改革プラン(平成28年度~平成32年度)」(平成30年度改定)を策定している。その中で当院の役割として、・救急診療の充実により急性期医療を担うこと・地域の周産期・小児医療に貢献すること・緩和ケアを含めたがん診療を担うこと・急性期医療を終えた患者の在宅への橋渡しとなる医療を提供することを掲げている。
経営の健全性・効率性について
令和元年度は、4月の地域包括ケア病棟(44床)開設や10月の緩和ケア病棟増床(6床)等により、入院患者数及び医業収益が増加したことで、②医業収支比率及び④病床利用率は平成30年度に比べ上昇した。一方費用面では、高額医薬品の使用量の減少等により⑧材料費対医業収益比率は低下した。しかしながら、委託料等の経費が増加したほか、⑦職員給与費対医業収益比率は0.4ポイント低下したものの、医業収益の増加に比例して職員給与費が増加した。これらの結果、令和元年度においても純損失が発生し、平成30年度に比べ①経常収支比率は0.1ポイントの改善にとどまり、③累積欠損金比率は4.3ポイント悪化した。
老朽化の状況について
平成17年度に現在の新棟が完成し、比較的新しいことから、有形固定資産全体の減価償却率は全国平均及び類似病院平均値を下回っている。一方で、これまでの経営不振による医療機器の更新の遅れなどにより、器械備品の減価償却率は高くなっており、他の有形固定資産と比較して老朽化が進んでいる。しかしながら限られた予算の範囲内ではあるが、医療機器の更新を行っており、類似病院平均値との差は徐々に縮まっている。
全体総括
令和元年度において入院患者数は一定数増加したものの、現状では病床利用率の低迷や外来患者数の減少により、経常収支の黒字化が達成できておらず、老朽化が進んだ医療機器等の更新を経常収益で賄えない状態が続いている。また令和2年2月以降、新型コロナウイルス感染症の影響と思われる外来患者数の減少が続いており、今後の感染拡大状況によっては経営状況はさらに厳しいものとなる恐れがある。経営状況の改善に向けては、「市立柏原病院新改革プラン」に基づき、救急搬送患者の受入数増加、病診連携強化による紹介患者獲得や緩和ケアを含むがん診療を積極的に行うこと等のこれまでの取組みに加え、経営コンサルタントを活用し、「地域ニーズの掘りおこし」、「地域医療機関との連携強化」、「サービスの向上」を戦略的集患プロジェクトとして取組を行い、対前年比で新入院患者数を3%、外来患者数を5%増加させることにより医業収益の増収を図るとともに、人件費の抑制等による医業費用の削減を実行し、早期に経常収支の黒字化を図っていく。