経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率は、使用料や繰入金等の総収益で、地方債償還金を加えた総費用をどの程度賄えているかを示す指標で、100%以上であれば単年度収支が黒字であることを表します。100%未満であった平成24年度以降右肩上がりに推移し、平成26年度には100%を超えており、事業は安定しつつあります。しかしながら、営業外収益である繰入金の割合が40%を超え年々増加する傾向にあり、一般会計からの繰入金に頼った経営となっています。⑤経費回収率は、使用料で回収すべき処理費用を使用料でどの程度賄えているかを示す指標で、100%以上であれば、使用料収入は処理費用を回収できているといえます。本市の場合、類似団体と比較して高いものの、100%には達しておらず、処理に係る費用を使用料収入で回収できていません。しかしながら、平成23年度以降徐々にではありますが改善の傾向にあります。⑥汚水処理原価は、有収水量1㎥あたりの汚水処理に要した費用であり、汚水処理に係るコストを表したものです。この指標が低いほど、効率的な処理ができていると考えられます。本市の汚水処理原価は150円前後を推移しており、類似団体と比較して100円以上も低く、使用者の負担も軽いといえます。⑧水洗化率は、現在処理区域内人口のうち水洗便所を設置して汚水処理している人口の割合を表した指標で、類似団体と比較してやや高いものの、70%程度に留まっています。下水道の目的である公共用水域の水質保全は勿論のこと、経営の根幹を成す使用料収入へも影響することから、今後も普及促進に努める必要があります。
老朽化の状況について
本市では、法定耐用年数を超えるような管渠は存在しないため、現在のところ管渠の改善更新は行われていません。しかしながら、平成6年度の建設開始から20年以上経過しており、マンホールポンプ等の施設については更新時期を迎えつつあります。改善更新は今後の大きな課題であることから、新設と更新とのバランスを図りながら計画的に事業を進めていく必要があります。
全体総括
本市の場合、いずれの指標も類似団体と比較して良い数値を示していますが、決して経営が良いとは言い難い状況です。公共下水道事業は、他事業に比べて財政規模が大きく、その財源には多額の起債(借金)が充当されています。また、その返還には一般会計からの繰入金が充てられてきましたが、一般会計への影響も少なくなく、経営基盤の強化が早急かつ大きな課題となっています。この様な事情を踏まえ、本市においても「健全かつ持続可能な下水道経営」を目的に掲げ、平成27年度から地方公営企業法を適用し、これまでの官公庁会計から企業会計へと移行したところです。企業会計への移行は、経営状況や資産状況等がより明確となり、経営の健全化につながるものと考えます。公共下水道事業については、今後も使用料等の収益の確保並びに事業の効率的な整備や適切な維持管理を行い、経営の健全化に努めていきます。