地域において担っている役割
地域医療構想による「地域全体で一つの病院」として機能するため、当院は高齢者を中心とした回復期の医療提供を行い、急性期病院や近隣開業医、介護施設を連携させる役割を担っている。今後、当医療圏域における超高齢化の更なる進行を踏まえ、在宅医療やへき地医療、認知症医療、終末期医療など、高齢者を支える医療提供を行うとともに、住民健診や事業所健診、人間ドックなどの総合健診事業を行い、地域住民の健康増進・予防活動に積極的に取り組んでいく。
経営の健全性・効率性について
地域ニーズに即した回復期の医療提供と入院収益向上の両立を図るため、平成28年度に一般病床の一部(15床)を地域包括ケア病床に転換、その後段階的にケア病床を増加し、現在は24床で運営している。その結果、入院患者1人1日当たりの収益および医業収支比率が改善されてきている。一方で、給与費や経費の削減にも努めており、会計年度任用職員制度の施行により令和2年度から給与費の比率が高まってはいるが、医業収益に占める給与費・材料費の割合は類似病院の平均値を大きく下回る状況となっている。以上の結果、経常黒字を達成しており、累積欠損金比率も徐々に改善してきている。
老朽化の状況について
平成27年度の病院再編時に、高圧電気設備、通信回線設備、医療ガス設備、防災設備など主要設備の更新を行い、その他の施設・設備についても日常的な保守点検や修繕を行いながら長寿命化に努めている。医療機器についても、耐用年数経過後も定期的な保守点検や必要な修繕を行いながら長寿命化に努めているが、診療に影響を及ぼす不具合があれば都度機器の更新を行うようにしている。ただし、病院再編により病床規模を縮小したものの、施設規模は大きく変わっていないことから、有形固定資産減価償却費率や1床当たり有形固定資産は類似病院平均値を大きく上回り、施設の利用効率が悪い状況となっている。
全体総括
当市の人口については、全体として今後も減少が進むものの、高齢者人口は2025年まで増加を続け、その後2040年までは現在よりも高い水準で推移すると予測されており、当院が担う高齢者を中心とした回復期の医療については長期にわたり高いニーズが見込まれている。それに対応するため、地域包括ケア病床の割合を段階的に増やし、急性期病院と在宅や介護施設を橋渡しする役割を強化しながら、さらなる経営改善を図り、医業収支比率の向上および累積欠損金の改善に努めていく。ただし、施設の老朽化が進行していることから、市長部局との連携を図り、移転新築の方向性も模索していく。