地域において担っている役割
当院は、椎葉村内で唯一の病院であり、さらに近隣市町村の最も近い医療機関との距離が30km以上離れていることなどから、本県のへき地医療拠点病院に指定されている。このような状況から、通常の診療のほか、24時間365日体制の救急対応、巡回診療、訪問診療、予防接種、各種健診、福祉施設の回診など、不採算であっても担わなければならない業務を多数抱えており、これらの医療サービスを継続させていく必要がある。また、令和2年度からは新型コロナウイルス感染症の診療・検査医療機関に指定され、対応している。
経営の健全性・効率性について
患者数については、新型コロナウイルス感染症の度重なる流行により、受診を控える住民が多かったことなどが影響し、入院、外来ともに減少した。このことが要因となり、医業収益についても、入院、外来ともに減収となったことで、前年度比で26,455千円(7.2%)の減額となった。類似団体と比較して、病床利用率や患者1人1日あたりの収益は低く推移している一方で、病院改革プランの取り組みなどで、累積欠損金比率、経常収支比率、医業収支比率については類似病院よりも良い状況で推移している。
老朽化の状況について
現在の施設は、平成7年の新築移転から26年以上経過しており、耐震上は問題ないものの、施設や器械設備の一部に更新時期を迎えていることから、公共施設等総合管理計画の個別計画に基づき、年次計画的に改修や更新に取り組んでいる。また、有形固定資産や器械備品の減価償却率、1床あたりの有形固定資産額については、類似病院の平均値を下回っており、当面は定期点検をしながら適切な維持管理に取り組むこととし、大規模改修等の予定はない。
全体総括
本村は、中山間地域の過疎化が進む自治体であり、面積が広大で公共交通機関も十分でないことから、患者は本村に居住している住民が中心となっている。したがって、患者数の大幅な増加は見込めないものの、へき地医療拠点病院として多機能な役割を果たしていかなければならない。経営面としては、患者数や医業収益はやや減少傾向にあるが、病院改革プランのもと効率化を図りながら、経営の安定化をめざしている。令和2年度決算で、現金預金を含む流動資産が負債を大きく上回る546,721千円となっているため、財政健全化比率や公営企業会計における将来負担比率については基準内であり、企業債も令和6年度にすべての償還が終了する予定。