経営の健全性・効率性について
水道本来の事業活動に支払利息などの財務活動の要素を加えた「①経常収支比率」は100%を超え、経常損益は黒字を確保するとともに、平成4年度から23年連続で純利益を計上していることから、本県の経営状況は安定している。本県の「③流動比率」は、短期債務に対して十分な支払能力を有しているとされる200%の水準を、概ね確保している。企業債残高は平成2年度の2,761億円をピークに削減に努め、平成26年度末で1,392億円と半減させており、財務内容の健全化を図っている。本県は、類似団体の中で給水能力、総送水量が第1位であり、そのスケールメリット等から「⑥給水原価」(水1㎥を送るための費用)は低い水準にある。また、「供給単価」(水1㎥を販売するときの単価)を、給水原価をやや上回る額に設定していることから、「⑤料金回収率」は100%をやや超える水準となっている。そのため供給単価と給水原価の乖離が類似団体と比べ小さく、低廉な価格で水を供給している。「⑦施設利用率」は65.70%であり、一見すると、送っている水量に対し送水能力が大きいように見える。しかし、本県では現在、各浄水場の耐震化工事を実施しており、工事期間中、一部の施設が稼働できず、送水能力が低下している。この他、浄水場を維持管理する上で必要な予備施設を考慮して、現在の送水能力は安定給水に必要な水準にある。本県の「⑧有収率」は概ね100%であり、水道施設を適正に維持管理し、漏水などの影響を受けずに水を供給していることを示している。
老朽化の状況について
本県は、全国に22ある府県営水道用水供給事業体の中で事業開始時期が4番目に古く、「①有形固定資産減価償却率」の数値はやや高くなっている。また、水道施設や送水管路などの有形固定資産は、古いもので稼働開始後45年以上が経過し、この指標値は上昇傾向にある。送水管路についても、2浄水場の創設時に布設した管路が法定耐用年数40年を経過し、「②管路経年化率」は26.45%と前年度比で17.8ポイント上昇した。しかし、支線3路線の管路更新工事が完了し、平成26年度に供用開始したことから、「③管路更新率」は前年度比で0.69ポイント上昇の0.76%と改善した。経年化の進む水道施設や送水管路等の資産を対象としたアセットマネジメントにより、資産の老朽度や健全度を適切に評価し、健全経営を維持しながら、効率的かつ計画的に更新等を進めていく必要がある。
全体総括
以上のとおり、経営の健全性・効率性はいずれも概ね良好な状況である。企業債残高等の外部負債の削減にも努め、財務内容の健全化が進んでいる。しかし、近年は節水型社会や人口減少の進展に伴い、収益の源である水需要は平成13年度の一日平均送水量186.4万㎥をピークに、平成26年度は175.1万㎥と減少傾向にあり、「⑦施設利用率」などは低下傾向にある。また、費用の面でも老朽化した施設や管路の更新に伴う建設費用の増加が見込まれる。そのため、減少する水需要を見据え、浄水場の施設規模の最適化(ダウンサイジング)を図ることで、適切な施設利用率を維持し、サービス水準を低下させることなく、効率的な事業運営に努めていかなくてはならない。また、引き続き維持管理コストや建設コストの縮減を徹底していくとともに、水道施設や管路を適切に維持管理し、健全経営を維持できる中長期の更新計画を策定し、実行していく必要がある。