地域において担っている役割
急性期医療を担う尾張東部医療圏唯一の公立病院として、地域医療計画で位置付けられている5疾病5事業のがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、救急医療、災害時医療、周産期医療、小児医療等の医療を提供している。一方、結核や感染症といった政策的でありかつ採算性の面で民間では運営困難な医療も提供している。そして、地域医療支援病院、臨床研修病院として地域医療連携の主導や人材の育成を図るなど持続的に地域住民の生命と安全安心を守る役割を担っている。
経営の健全性・効率性について
④病床利用率が高くなっているのは、新病棟がH30年5月に稼働しており、総病床数を701から633に減床している影響もあるが、効率的な病床管理を行う専任部署の設置など組織的な強化により、新病棟の稼働前後における入院患者数の減少を年度中に渡って補えたことによるものである。⑤入院⑥外来1人1日当たり収益も診療報酬改定の影響や診療機能を充実したことにより順調に伸び収益額も増加した。医業収益が伸びたことにより⑦給与費⑧材料費の対医業収益比率も僅かではあるが改善できた。このような状況下でも①経常収支比率②医業収支比率は急激な悪化を示している。原因として、減価償却費が前年比73%も増加したことが挙げられる。H29年度に新病棟や医療機器の更新に伴い固定資産が増えたためであり、今後も中期的にはこの傾向は続くと考えられる。
老朽化の状況について
H29年度に主要な固定資産の購入は済んでおり、①有形固定資産②器械備品の減価償却率が平均値を下回り、老朽化への対策は計画どおり対応できたと言える。③1床当たり有形固定資産がH29年度から大きく平均値を大きく上回っているが、これは旧建物や更新前の医療機器がまだ固定資産に残っており、新しいものと重なって計上されていることが影響しているものと考えられる。来年度に金額的に大きい旧建物を固定資産から除却する経理を予定しており、ある一定の改善は見込まれる。
全体総括
新病棟のオープンを迎えることができたH30年度決算は、収支が示すとおり大変厳しい決算と総括せざるを得ない。赤字の大部分が減価償却費の増大したことによるものとは言え、本業である医業収益の増加分で人件費、材料費、経費等の増加分を賄えていないのが現状である。しかしながら、患者数が著しく減少しているわけでもなく、専門的で高度な医療を効率良く提供することで患者1人当たりの収益は上がってきている。来年度は、6年に渡った建替事業が患者用駐車場等の完成を以て完了となる。新生陶生が、更なる地域医療連携の強化、人員の適正配置、材料費の購入価格の抑制及び経費削減を進め上述の役割を果たしていくことが結果として経営的な浮上に繋がると考える。(平成28年度新公立病院改革プラン策定済み及び令和2年度見直し予定)