地域において担っている役割
当院の役割は、尾張北部医療圏の中核病院として、救急医療、高次医療、がん診療を中心とした医療を継続的に行う高度急性期及び一般急性期における役割と、公的医療機関として採算性等の面から、民間医療機関による提供が困難な救命救急や周産期等の医療を提供する役割である。
経営の健全性・効率性について
医業収益が増加し、特別損失が減少したものの、新病院に係る減価償却費の大幅な増加をはじめ、給与費、材料費、経費等の医業費用の増加により、①経常収支比率及び②医業収支比率共に100%を下回ったが、従来からの健全経営により、累積欠損金を出すまでには至らなかった。④病床利用率の上昇は、平均在院日数の比較的長い整形外科や血液内科等の患者数が増加した影響による平均在院日数の延長に加えて、新病院において病床数が558床から520床に変更となったことも影響したと考える。⑤入院患者1人1日当たり収益は、主に単価が高い循環器内科や心臓血管外科、整形外科など手術を行う診療科の入院患者数が増加したこと、⑥外来患者1人1日当たり収益では、がん治療などの増加や化学療法室の増床など専門的かつ高度な医療提供体制の底上げにより、前年度を上回った。⑦職員給与費対医業収益比率について、主に看護部門で減員となったものの、技師人数が増加したことにより上昇し、⑧材料費対医業収益比率について、引き続き、高額な薬品・診療材料を使用する診療科の収益が増加したことで、依然上昇傾向にある。
老朽化の状況について
新病院建設に伴い、旧病院建物及び器械備品を減損処理した結果、①有形固定資産減価償却率、②器械備品減価償却率で平均値を下回り、③1床当たり有形固定資産が、昨年度は竣工時期の関係で新旧病棟分が併せて計上されたことにより、平均値を大きく上回ったが、建物等簿価引落額の計上により前年度より低下した。
全体総括
平均と比して比較的良好な経営状況を続けてきたが、前年度における新病院建設に伴う遊休資産となる固定資産等の減損損失が皆減となったものの、新病院に係る減価償却費の大幅な増加を含む医業費用の増加により、連続して当年度純損失となった。今後数年間に亘り、純損失となることが見込まれることから、経営安定化に向け病院一丸となった努力が必要となる。2021年3月に策定予定の小牧市民病院改革プランでは、2025年度で黒字化する計画としているが、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける厳しい経営環境の中、医療の質を確保しつつ、診療収入の増加及び費用の削減に努める必要がある。特に材料費や委託料等において増加傾向が見受けられるため、増加要因の分析を行い、費用削減対策をとるとともに、新病院の能力を発揮できるよう、PET-CTなどの高度医療機器の稼働向上やハイブリッド手術室・ダヴィンチ(手術支援ロボット装置)等の活用による高度医療症例の増加対策を進めることにより、収入を増加させなければならない。