地域において担っている役割
周防大島町立橘病院は周防大島町の中部地域の医療を担い、救急患者等の時間外患者受け入れの役割も果たしている。近隣の総合病院へは車で50分かかる立地条件にあって、他医療機関等の協力などにより特殊診療科の診療も行っている。また、周囲に歯科診療を行う医療機関が無い地域にあって、歯科の診療も行っている。併設の介護老人保健施設と緊密に連携し、患者が安心して療養できる体制を構築している。
経営の健全性・効率性について
経常収支比率が類似病院平均値を下回っており、累積欠損金比率は平均値を大きく下回っているものの上昇傾向にあるため、今後の経営改善に努める。病床利用率は併設の介護老人保健施設との連携により高い利用率を維持している。一方で入院患者1人1日当たり収益は平均値を下回っているが、これは長期入院患者の割合が多く、手術をほとんど行っていないことが要因である。外来患者1人1日当たり収益については、リハビリ目的と歯科の患者の全体に占める割合が高いことが要因である。職員給与費対医業収益比率は類似病院平均値に近い値を推移しているが、材料費対医業収益比率については、入院期間が90日を超える患者について包括診療としていることが平均値を上回る原因と考える。
老朽化の状況について
老朽化した機械備品等については適宜更新を行っており、現在平均値に対して特に大きな乖離は見られない。しかし、現在の経営状況に鑑みて設備投資の抑制を図る方針であり、現在保有する機械備品については保守点検を十分に行い、安全性を確保しつつ耐用年数を超えて使用することとしているため、今後は老朽化が進展することが考えられる。1床当たり有形固定資産は平均値を上回るが、これは地域住民への一定水準の医療提供のため、CT等の高額な医療機器を整備していることが要因であると考えられる。今後の機器整備については地域の医療需給等情報の分析を行い、過大な投資とならないよう留意する。
全体総括
周防大島町立橘病院は東西に広い周防大島町の中部地区において地域医療の確保に欠かすことのできない病院である。近年は周防大島町の人口が徐々に減少していく状況の中、病床利用率は高い水準を維持しているが1人1日当たり収益が低く、外来患者数の減少もあり医業収益は減少してきている。一方で給与費の増加等により支出は増加しており、経営状況は厳しさを増してきている。今後は一般病床の一部を地域包括ケア病床へ転換し、山口県地域医療構想にて柳井保健医療圏に不足しているとされた回復期病床の増加に貢献しつつ、1人1日あたり収益を上昇させるなどし、収益の増加を図る。また、周辺の医療機関、施設等との連携を緊密にすることによって外来患者の確保、高い病床利用率の維持と入退院の回転率向上に努める。