経営の健全性・効率性について
本県では、各指標とも、平均と同水準もしくは平均を上回っており、概ね健全で効率的な経営を維持しています。①「経常収支比率」は、企業の損益状況(黒字・赤字)を示す指標で、100%以上であれば、黒字です。グラフが示すとおり、100%を上回り、類似団体の平均と比べても高く、健全な経営を維持しています。現在の料金に改定した平成23年度と比べると、直近の平成26年度の数値は、やや落ち込んでいますが、給水業務を行なうために必要な経費のうち、動力費(電気代)や委託料などが、平成23年度に比べて多額となり、水1m3あたりの経費(⑥給水原価)が上昇したためです。④「企業債残高対給水収益比率」は、水道料金収入に対する企業債残高の割合を示す指標で、“借金の重さ”“負債の規模”を表わしています。現在の料金となった平成23年度においては、303%で料金収入のおよそ3倍強でしたが、平成26年度末では262%に低下しています。これは、当初、吉川浄水場の耐震対策を実施する予定でしたが、東日本大震災の発生を受けて、耐震化の基準を見直す必要が生じたため、耐震対策を先送りしています。その結果、新たに借り入れる企業債の額が減少し、企業債残高が経営計画で見込んだ額を下回ったためです。また、資金収支の面でも現金預金残高が増加したことから、短期的な支払能力を示す③「流動比率」は、平均値を大きく上回っています。⑦「施設利用率」は、1日あたりの配水能力に対する1日あたりの平均配水量の割合であり、施設の利用状況や適正規模を判断する指標で、一般的には高い数値であることが望まれます。また⑧「有収率」は、施設の稼動が収益につながっているかを判断する指標で、100%に近いほど施設の稼働が漏れなく収益に反映されていることになります。ともに水道施設の効率性を表わすものですが、類似団体の平均とほぼ同水準にあり、安定して水道水を供給するうえでも適度に確保されています。
老朽化の状況について
本県では、水道用水供給事業創設から、約40年近くが経過し、施設・設備の老朽化が進行しつつあります。本県の状況を老朽化の度合いを示す各指標を用いて説明します。①「有形固定資産減価償却率」は、建物、構築物(水道管やろ過池など)および機械装置といった施設全体の減価償却がどの程度進んでいるかを示す指標です。減価償却費を算出するために用いる法定耐用年数を“ものさし”として、水道施設がどの程度古くなっているかを客観的に見ることができます。本県の水道施設は、法定耐用年数のおよそ半分を経過している状態で、類似団体の平均ともほぼ同じです。施設の種類毎に見ると、建物は35%、配水管は49%、機械装置は64%です。②「管路経年化率」は、水道管(管路)の総延長のうち、法定耐用年数を経過した管路延長の割合を示す指標で、管路の老朽化度合を表わしています。本県では、3つの浄水場があり、昭和53年から順次、供給を開始しており、事業開始当初に設置した管路の一部(総延長およそ200kmのうち1割弱)が耐用年数を経過しています。③「管路更新率」は、それぞれの年度において、更新工事を実施した管路延長の割合を表わす指標ですが、グラフが示すとおり、現在のところ更新実績はありません。本県所管の水道管については、経過年数等による老朽度、送水量やバックアップの有無、耐震性といった複数の視点からの評価に基づく、管路更新計画を策定しておりますので、この計画に基づき、平成28年度から順次、更新工事に着手する予定です。
全体総括
本県の水道用水供給事業は、各指標が示すとおり、概ね健全で効率的な経営が保たれています。しかしながら、節水意識の向上や節水機器の普及、人口減少社会の到来により、将来の水需要は減少していくと見込まれています。その一方で、老朽化していく施設設備の更新や浄水場の耐震対策を進めていく必要がありますので、これからの経営環境は非常に厳しくなります。このため、中長期的な視点から、更新を行なう優先順位を見極め、財源の裏付けのある財政収支の見通しを立てて、計画的な施設の更新・維持管理が必要です。このような考えのもと、平成27年度末までに、今後40年間にわたる施設整備計画を定めた「滋賀県企業庁アセットマネジメント計画(平成28年度~平成67年度)」を策定し、この計画に基づき、効率的・効果的に事業を進めます。この計画では、健全な経営を維持するため、保つべき経営水準として、経営指標の目標値を次のとおり設定しています。○経常収支比率100%以上を維持するよう努めます。現時点では、健全な経営状況にありますが、さらなるコスト削減を検討して経営の効率化を進めます。○企業債残高対給水収益比率概ね300%とし、企業債残高の上限を150億円とします。耐震対策や更新工事を実施するにあたっては、自己資金を積極的に投入することにより、企業債の新規借入をできる限り抑制します。○給水収益に対する内部留保資金の残高を中期的に90%程度を堅持します。更新投資に必要な自己資金を確保するため、1年間の料金収入と同程度の資金を保持します。