地域において担っている役割
急性期医療を担う尾張東部医療圏唯一の公立病院として、地域医療計画で位置付けられている5疾病5事業(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患と救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)に係る医療並びに結核及び感染症といった政策的かつ採算性の面で民間では運営困難な医療を提供している。また、地域医療支援病院、臨床研修病院として地域医療を支える人材の育成を図るなど地域住民の命と安全安心を守る役割を担っている。
経営の健全性・効率性について
①経常収支比率②医業収支比率はH26年度以降、西病棟稼働等に伴う給与費、経費、減価償却費の増加及び患者数や他会計負担金の減少等による減収が影響し下降局面であったが、H29年度には④病床利用率の改善や⑤⑥入院・外来共に診療単価が堅調に推移した結果、特に入院収益が大幅増となり健全性を持ち直した。各指標で改善を示しているが、⑧材料費対医業収益比率について、高額な抗がん剤の使用が増加したという必然的な要因もあるが、引き続き材料費全般に関して、適正な仕入価格や在庫管理の検証を進め抑制していく必要がある。一方、⑤入院患者1人1日当たり収益の現状から施設基準、DPC係数のレベルアップや手術等の出来高算定分の底上げによる収益増加を図れる余地があることを示すものと捉えており、増収により対医業収益比率を押し下げ、効率性を上げることも可能であると考えている。
老朽化の状況について
はじめに老朽化に関する3つの指標において、H29年度の数値が前年度と比べて大きく変動している点であるが、旧病棟や更新される医療機器の廃棄及び資産上の除却は、H30年度となるので新旧の有形固定資産が重なった状況で算出されたことを踏まえて分析する必要があると思われる。H30年5月の新病棟の稼働に合わせてH29年度中に病棟の完成及び器械備品の購入をしたので高額な固定資産の計上となった。このため、①有形固定資産減価償却費率、②器械備品減価償却費とも大幅に改善しており、老朽化に対応できたと言える。③1床当たり有形固定資産も突出しているが、計画時より高騰した建設費や高額な高度医療機器の購入によるところであるが、これら資産を有効活用し、投資をいかに早く回収していくことが今後の経営面での課題であると捉えている。
全体総括
H29年度は、新病棟の竣工に伴う経費の増加等で厳しい収支が予想されたが、決算額では前年度と比べ入院収益が大幅に改善できたにもかかわらず、経費、材料費ともに横ばい状態に押さえることができた。また、合わせて医業収益、医業外収益に充てられた他会計負担金の増額が、収益に係る指標の改善に大きく影響していることも重要であった。当院の担う役割を果たしつつ、今後も持続可能な安定的経営をしていくには、ムダな費用の削減などの内的な経営努力は言うまでもなく、地域医療の関係機関との連携を強化し、構成市との良好な関係を保ち協議を重ね、また医療に係る行政機関としての協力も得て、改革プランで策定している経営戦略を能動的かつ柔軟に推し進めていくことが必要である。(平成28年度新公立病院改革プラン策定済み)