地域において担っている役割
当院が地域において担っている役割として、救急医療では、2次医療圏で唯一の救命救急センターとして地域の重篤な救急患者の受入れを行っている。がん医療では、2次医療圏で唯一の国指定「地域がん診療連携拠点病院(高度型)」として質の高いがん医療の提供を行っている。周産期医療では、「地域周産期母子医療センター」としてNICUを整え、充実した小児・周産期医療を提供している。また、9月より新型コロナウイルス重点医療機関として主に中等症以上のコロナ感染者の受入れを行っていく。
経営の健全性・効率性について
病棟再編・医療スタッフの配置の見直し、化学療法の実施等による患者1人当たりの収益は上昇したものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による受診控えなどから患者数は減少し、医業収益は前年度に比べ減少し、医業収支比率が前年度より5.6%減少した。経常収支比率については、新型コロナウイルスに係る補助金等もあり、前年度よりも1%増加したものの、類似病院平均値よりは低い状態となっている。病床利用率は、前年度より6.4%減少したものの、類似病院平均値より高くなっており、効率的な病床運営が行われている。累積欠損金は依然として類似病院平均値より高いため、引き続き収支の改善に努める。職員給与費対医業収益比率は診療体制の充実(常勤医の増加)により4.1%の増加した。依然として類似病院平均値より高い状態である。材料費医業収益比率は類似病院平均値よりも低い状態が続いている。引き続き安価な調達に努める。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率、器械備品減価償却率については、例年、類似病院平均値より高い数値となっているが、令和2年度における器械備品減価償却率は、類似病院平均値より低くなっている。これは、新型コロナウイルス感染症に対応するための医療機器等の新規購入又は更新が進んだことを示している。令和2年度については、当該数値となったが、平成7年開院から26年を経過し、老朽化に伴う施設・設備の更新の必要性はまだまだ高い状況である。令和元年度に策定した施設・修繕計画に基づき、医療の質を確保するとともに、計画的な投資により、今後も施設・設備の長寿命化を図っていく。
全体総括
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症拡大による受診控えから前年度を下回る医業収益となった。こうした中で、新型コロナウイルス感染症対策として病棟の一部を休止し、医療スタッフを再配置するとともに病棟や施設の改修に努め、新型コロナウイルス感染症患者及び救急患者の受け入れ体制を整備する補助金を収入した。その結果、経常収支差引では収益が費用を上回り、4年連続で経常収支の黒字となった。しかし、老朽化した施設・設備の維持管理や修繕費用の増加、診療体制の充実に伴う給与費の増加、高額な抗がん剤をはじめとする薬品費の増加など、今後も非常に厳しい経営状況が予想される。「質が高く、安心・安全な医療を継続して提供する急性期病院」を目指して、充実した診療体制を維持しつつ、経費削減など、より一層の収益確保に努め、各指標の改善を図っていく。