地域において担っている役割
当院は国民健康保険診療施設として設置され、当市人口の約3割が国民健康保険加入者であり、かつ、当院患者の約23%が当該被保険者である。また、市からの委託により、特定・長寿健康診査、人間ドック、各種がん検査等を実施し、市民の健康づくりを担っている。病院施設としては、複数科及び50床の病床を有しており、近隣の開業医や関連施設からの紹介又は逆紹介による医療連携を図り、市の地域医療の中核を担っている。また、市内で唯一救急告示病院としての機能を持ち、救急自動車搬送や時間外の患者受入を365日間実施している。なお、新型コロナウイルス感染症に関しては、当該感染症患者及び回復期患者に係る病床の確保やワクチン接種推進への協力など公立病院としてコロナ禍で求められる役割を積極的に果たしている。
経営の健全性・効率性について
これまでも本市の人口減少が影響し患者数が年々減少してきていたところに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による受診控えも相まって、患者数が相当な落ち込みとなった。この患者数の大幅減により、医業収益においては、入院・外来収益の合計が前年度比で△77,001千円となり、大きな減収幅となった。また、医業費用においては、患者減少の影響で材料費が大きく減少する一方で、主に会計年度任用職員制度への移行に伴う人件費増や年次計画で進めてきた器械備品更新に伴う減価償却費や保守委託料の増により、前年度比で微増となった。結果として、医業収支比率が前年度比で8.6ポイント減少し、医業収益に対する各経営指標も大幅に悪化させた。新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中では、患者数減少への歯止めの目途が立たないが、引続き内科医確保や医療連携により、特に新規患者獲得を目指していく。また、経営アドバイザーの雇用、経営分析システムの導入などにより新たな収支改善策を見い出し、効率的かつ健全な病院経営を強力に推進していく。
老朽化の状況について
施設については、昭和53年7月に竣工し、築40年を経過している。耐震基準は満たしているものの、老朽に伴う破損等も増え、その都度修繕や補修で対応しているが、修繕等が困難で費用も嵩む配管等の修繕困難箇所の対応が懸念されるところである。また、医療機器等については、令和2年度末現在で、約71%が耐用年数を経過している状況であるが、平成28年度策定の医療機器等の更新整備計画に基づき更新等進めた結果、年々減少を続けており効果が見られる。今後も引き続き当該計画に基づく更新整備を進めることとし、計画外の医療機器等についても、診療等に支障を来さぬよう日頃の管理を徹底し、市民に良質かつ安定した医療サービスを提供できる診療体制の維持に努める。
全体総括
えびの市病院事業における各経営指標の悪化は、年々顕著に低下する患者数の減少による医業収益の減少と歳出抑制が進まないことが主な要因である。また、収益増に必要不可欠な医師確保が進まないことに加え、市の人口減少や新型コロナ感染症感染拡大等も重なり、新規患者獲得のための方策がなかなか打ち出せない状況にある。病院経営改善の対策としては、コロナ禍における公立病院の役割を果たしながら、前病院改革プランの未達成事項である医師確保に引き続き取り組むとともに経営アドバイザーや経営分析システムを活用しながら新たな収支改善を見出していく。今後も市の中核を担う病院として、持続的で切れ目のない医療サービスの提供ができる健全な経営体制の構築に努め、病診連携や病病連携を密にし、地域医療に貢献していく。