地域において担っている役割
当院は国民健康保険診療施設として設置され、当市人口の約3割が国民健康保険加入者であり、かつ、当院患者の約23%が当該被保険者である。また、市からの委託により、特定・長寿健康診査、人間ドック、各種がん検査等を実施し、市民の健康づくりを担っている。病院施設としては、複数科を有し、入院設備を完備していることで、近隣の開業医や関連施設からの紹介又は逆紹介による医療連携を図り、市の地域医療の中核を担っているとともに、市内で唯一救急告示病院としての機能を持ち、救急搬送受入れや時間外の患者受入を365日間実施している。
経営の健全性・効率性について
平成30年度は入院患者が微増となったものの、令和元年度は、入院・外来患者ともに減少に転じた。ただし、入院患者1人当たり収益に関しては、地域包括ケア病床を今年度4月から導入したことに伴い、収益増に繋がったところである。しかし一方で、外来患者の減少が進んだことによる外来収益の減少及び各種検診者等の減少に伴うその他医業収益の減少により、病院事業収益は、前年度に対し微増に留まったところである。また、病院事業費用については、材料費及び除却に伴う資産減耗費が大幅な減少となったが、主に地域包括ケア病床導入に伴う職員採用による人件費の増及び器械備品の増加に伴う保守委託の増加による経費の増加により、前年度比で微増となった。結果として、経常収支比率は微増となったものの、その他の各経営指標の比率は悪化となった。患者数減少は今後も予想されるが、引続き内科医確保や医療連携により、特に新規患者獲得を目指していく。また、各部署における費用等の分析を行い、ジェネリック医薬品の採用促進、事務的経費の節約等により、効率的かつ健全な病院経営を強力に推進していく。
老朽化の状況について
施設については、昭和53年7月に竣工し、築40年を経過している。耐震基準は満たしているものの、老朽化に伴う破損等も増え、その都度修繕や補修で対応しているが、修繕等が困難で費用も嵩む配管等の修繕困難箇所の対応が懸念されるところである。また、医療機器等については、令和元年度末現在で、約76%が耐用年数を経過している状況であるが、平成28年度策定の医療機器等の更新整備計画に基づき更新等を進めた結果、年々減少を続けており効果が見られる。今後も引き続き当該計画に基づく更新整備を進めることとし、計画外の医療機器等についても、診療等に支障を来さぬよう日頃の管理を徹底し、市民に良質かつ安定した医療サービスを提供できる診療体制の維持に努める。
全体総括
えびの市病院事業における各経営指標の悪化は、年々顕著に進行する患者数の減少による医業収益の減少と歳出抑制が進まないことが主な要因である。また、収益増に必要不可欠な医師確保が進まないことに加え、市の人口減少も重なり、即効性があり、かつ新規患者獲得のための方策がなかなか打ち出せない状況にある。病院経営改善の対策としては、新病院改革プランに基づき、赤字解消等の取り組みを確実に実行することにあるが、その中で、今年度は地域包括ケア病床を導入し、病床機能転換を図り、経営の改善を積極的に進めたところである。今後も市の中核を担う病院として、持続的で切れ目のない医療サービスの提供ができる健全な経営体制の構築に努め、病診連携や病病連携を密にし、地域医療に貢献していく。