経営の健全性・効率性について
本町においては、毎年人口がゆるやかに増加しているため使用料収入も毎年微増していたが、節水器具の普及や企業の経済活動の高低等その他の条件によって、平成27年度の使用料収入は微減となった。次に、前年度(H26)の好調な使用料収入が収益的収入の充実となった反面、汚水処理施設への排水量と汚水浄化処理費用の増加に繋がり、費用を一部負担する関連市町においては中讃流域下水道維持管理負担金の増加、そして下水道維持管理事業費(収益的支出)の増加へ結びついた。さらに、地方債償還元金(汚水分)と地方債償還利子(汚水分)は、事業費の減少に起因した借入総額の低減等によって、償還金総額が抑制された。そのため、平成27年度決算では収益的収支比率が101.59%から98.4%と減少(▲3.19%)したものの、経費回収率が108.27%から109.97%と増加(+1.7%)、汚水処理原価が151.10円から148.16円と好転(-2.94円)しており、これらが依然として類似団体平均値を下回る状況を考慮すると、ただちに使用料を見直す状態とは捉えられない。もちろん、微増傾向にあった使用料収入が微減に転じたこと、使用料の堅調が(汚水浄化処理費用の増加ひいては)下水道維持管理事業費の増大に撥ね返る等、収益的収支(使用料収入と維持管理事業費の関係)は不安定な傾向となっている。よって公共下水道事業の安定した経営を保つためには、変動が生じやすい維持管理費を平準化して計画的に維持管理を行うこと、財源となる使用料収入と一般会計繰入金のバランスを保つこと、が挙げられる。企業債残高対事業規模比率は465.61%から363.41%と減少(▲102.2%)、やはり類似団体平均値を下回っているものの、今後は縮小する面的整備と下水道処理施設や老朽管の長寿命化・更新事業の増大が想定されるため、一定額の地方債借入ならびに元利償還金が予定される。ただし、平成27年度財政融資資金は低金利(0.3%)が設定され、昨今の経済事情を鑑みた公的資金の利率低下は継続するものと予想されるため、結果として企業債残高は、ゆるやかに減少し、公共下水道事業の経営に大きな影響を与えることはないと考えられる。最後に、当町の水洗化率は90%を超えているが、この要因は下水道が100%整備された新都市(旧塩田跡の埋立開発地)の人口が増加しているためであり、旧町内においては、水洗化率は必ずしも高いとは言えない。旧町内は、高齢者のみの世帯も多いため、各世帯の状況も踏まえつつ、水洗化を促進していく必要があると考える。また、新たに供用開始した地域においては、説明会等を通じて早期に下水道に接続していただけるように取り組んでいく。
老朽化の状況について
昭和54年に公共下水道工事に着手しており、初期に布設された管渠は、ヒューム管(コンクリート製)が多く、老朽化が問題となっている。そのため、平成26年度に第1期の汚水管の長寿命化計画を、翌27年度に実施計画を策定した。さらに平成28年度からは計画に沿った管渠の更新工事を毎年度、一定程度行う予定である。また、更新工事に並行して主要管渠の地震対策計画、長寿命化計画の後継であるストックマネジメント計画にも着手し、来るべき大規模地震への対策と計画的な維持管理の平衡を保つべき、と考えている。
全体総括
本町においては、公共下水道の供用開始から30年以上が経過し、面整備もほぼ完了しつつあるところから、今後は建設から維持管理へと主眼が移るものと思われる。ただし、面整備の後に地震対策等が控えているため、公衆衛生から危機管理にシフトする建設事業費を慎重に計画しなければ、再び企業債残高の増加を招き、経営を圧迫する要因になる。また、施設の老朽化に伴う維持管理費の増加を長寿命化工事等により費用を平準化し、汚水排水量の増加に伴う維持管理負担金の公平な負担を行うなど、浮き沈みが発生する維持管理費を均質化する必要がある。以上より、経営の健全性を保つためには、複眼的な観点から維持管理費と建設事業費の見直しを随時行い、公共下水道事業の経営を持続可能なものとしていかなければならない。