岡山市久米南町国民健康保険病院組合：国保福渡病院

地域において担っている役割

県下で最も高齢化が進んだ久米郡久米南町等の過疎地域を診療圏域とし、政令市・岡山市にあって唯一の過疎地域である旧建部町に立地している。こうした環境下で、自治医の派遣もなく数名の常勤医師と多くの応援非常勤医師で一般医療から救急、人工透析、訪問診療等を担っている。医療に加え保健、福祉との連携を通じ地域の暮らしを支え、これといった産業のない地域にあって、単に医療だけでなく、人口維持機能としての役割も大きなものがある。

経営の健全性・効率性について

平成27年度までは病床利用率の低下の割にはいくらかの凸凹はあるものの、透析部門の収益増による下支えや、人件費・光熱水費等固定費縮減の努力もあって、比較的良好な数値を示していたが、平成28年度は入院患者のかつてない大幅な減少により多額の単年度赤字に加えて累積欠損金を計上するに至った。ただ、この時点では資金の減少は見られない。類似病院平均値より「②医業収支比率」が高いものの「①経常収支比率」が低いのは他会計繰入金対経常収支比率が低いことによるものと思われる。なお、「⑥外来患者1人1日当たり収益」が高いのは院内処方と透析部門の収益が含まれていること、「⑧材料費対医業収益比率」が大きく上回っているのは院内処方による薬品費によるものである。

老朽化の状況について

「②機械備品減価償却率」は、減価償却終了後も使用しているものが多く、76.0％と老朽化が進んでいる。また、古い資産で除却できていないものも考えられるため、今後適正処理を進めていく必要がある。また、建物が古く老朽化が進んでいるように感じられるが、随時改修を進めており建物の償却率は51.1%で、その結果として「①有形固定資産減価償却率」は、60.0％を示している。いずれにしても建替えは今後の大きな課題である。

全体総括

類似病院平均値比較では、必ずしも低い数値を示していないが、病院機能としての入院患者の減少は今後の病院運営に影を落とし始めている。これらの原因として診療圏域人口の減少はあるものの、かなりの住民が20キロ以上も離れた大病院等の医療機関に流出していることが挙げられる。これには常勤医師不足を背景に救急や入院機能において、住民の医療ニーズに十分応えられていないことが考えられる。今後とも、常勤医師の確保に注力することはもちろんのこと、地域の診療所、福祉施設等との連携強化や、地域包括ケア病床の導入等も視野に事業展開を図る必要があるものと考える。