地域において担っている役割
当院は、隠岐医療圏のうち、島前地域(西ノ島町(人口約2,900人)、海士町(人口約2,300人)、知夫村(人口約650人))において、唯一の入院施設を有する医療機関として、急性期医療から在宅医療まで幅広い診療にあたっている。また、3町村にはそれぞれ無床の国保診療所があるが、そのうち西ノ島町の浦郷診療所と知夫村の知夫診療所へは、地域医療支援ブロック制の拠点として、医師の派遣及び代診等を行っている。
経営の健全性・効率性について
病床利用率は比較的高い水準で推移しており、医業収支比率も類似病院平均を上回っている。経常収支比率については、年によって増減を繰り返しているが、近年は上昇傾向となっており、累積欠損金比率は類似病院平均より大幅に低い水準にて経営を維持している。しかし、患者1人1日当たりの収益が、入院・外来ともに類似病院平均を下回っていることから、今後は当該数値を上昇させていくため、地域包括ケア病床の導入や、診療報酬の適正な算定を行うことによる診療単価のアップを図り、安定した収益が確保できるよう取り組んでいく。併せて、経費の抑制対策等による費用削減を図り、経常収支の黒字化を目指していく。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は、償却対象資産の中で75%を占める建物部分の影響が大きいところだが、当院の建物は、主に3つの区画(①旧館・昭和61年建築、②新館・平成13年増築、③リハビリ棟・平成25年増改築)から構成され、中でも旧館部分は建設から32年が経過し老朽化が進んでいることから、数値は上昇していく傾向にある。機械備品減価償却率及び、1床当たり有形固定資産については、概ね、類似病院平均と同率で推移している。
全体総括
当院は、離島という地理的条件や採算等の面から、民間による医療の提供が困難な不採算の地域に立地し、地域唯一の入院施設を持つ医療機関として地域医療の中心的な役割を果たしている。今後も厳しい経営環境が見込まれるが、平成28年度に公表された島根県地域医療構想を受け策定した、新公立病院改革プランを着実に実行し、医師・看護師をはじめとする医療スタッフの確保を図ったうえで、適正な収入と経費の縮減による、安定した病院経営に努めていく。また、施設の老朽化については、長寿命化に向けた対策を検討するとともに、今後の地域における医療・介護・福祉・保健のニーズを的確に把握し、関係諸機関と連携を図りながら、方向性や対策について検討、協議を行っていく。