経営の健全性・効率性について
須崎市公共下水道は、昭和61年度から整備に着手し、平成7年に須崎市終末処理場の一部供用を開始した(供用面積45ha)。当初計画では、予定処理区域を343haとして整備を進めてきたが、市の財政事情が悪化したことから、供用開始後は面整備をほとんど実施していない(平成25年度末、下水道整備率7.4%)。そのため、平成18年度には予定処理区域を57haに縮小する事業計画の変更を実施している。また供用区域内でも、宅地内の水洗化工事・排水設備工事の費用負担の問題、高齢化世帯での接続意思の低迷等から、なかなか水洗化が進んでいない。結果として、供用開始後約20年が経過した現在でも7割程度の水洗化率で推移している。現在は、積極的に下水道に接続しようとする家屋はほとんど存在せず、浄化槽更新時や家屋建て替え時に、接続されることが多い。面整備の遅延や水洗化率の低迷により、終末処理場の水処理施設稼働率も極めて低い状況である。現有施設は処理能力1,800m3/日に対し、晴天日平均で400m3/日の流入しか得られておらず、稼働率は25%であり、投資した資金の回収が進まない(経費回収率が低い)一因となっている。このような現状から経営の健全性・効率性は、極めて悪い状態となっている。
老朽化の状況について
須崎市終末処理場は、平成7年に供用開始してから、機械・電気設備について消耗品の交換などの日常的な管理に加え、設備に不具合が生じた場合の修繕や改築を実施するなど、適正な維持管理に努めてきた。しかし、供用からの時間経過により施設の老朽化が進んでいることから、設備のLCC最小化を図ることを目的に平成24年度に「終末処理場長寿命化計画」を策定した。診断結果によると、大半の設備の劣化状況が著しい状況となっており、設備更新の総事業費は約12億円である。なお、管路施設の老朽化調査は未実施となっている。
全体総括
須崎市では現在、下水道事業の経営改善にかかる2つの対策を実施している。まずハード面の対策として、H28年度下水道革新的技術実証事業(国交省所管)の採択をいただき、水処理施設のダウンサイジングを実施している。またソフト面の対策として、公共下水道施設に運営権を設定するいわゆるPFI事業(コンセッション事業)の導入を検討している。前者は、実規模では国内初となる水処理技術の導入であり、後者も下水道事業への導入事例は極めて少ないが平成30年度中の事業開始を目指している。いずれも、クリアしなければならない課題は多いものの、大幅な経営改善に資することができるものとして期待している。