経営の健全性・効率性について
収益的収支比率は、比較的良好に推移していますが、これは国で定められた一般会計からの繰入金とそれを上回る基準外の繰入金を多く含むためで、総収益の6割程度を繰入金が占めています。また、経費回収率に影響する汚水処理原価については、企業債にかかる元金償還に対して繰り入れを行う費用は含まれないため、類似団体や全国平均と比較しても平均的な数値となっていますが、現在の使用料収入では大幅に総費用が賄えない状況となっています。企業債残高対事業規模比率については、一般会計からの繰入分である公費負担分が残高と同額であるため数値に反映されないこととなっていますが、企業債の償還は全額一般会計からの繰り入れによるもので、今後も繰入金に頼らざるを得ない状況となっています。施設利用率については、類似団体や全国平均と比較すると低い数値となっていますが、浄化槽1基当たりの処理水量は多い傾向にあります。しかし、今後は人口減少等による有収水量の減等の要因により減少していくと考えられます。水洗化率については、平成27年度をもって整備事業を終了し、自己設置型の浄化槽設置事業へ移行することから100%となっています。今後は、設置基数の増加はなく、人口減少等の影響により、使用料金に反映される有収水量が減少していくとともに、事業自体の縮小が見込まれます。
老朽化の状況について
個別排水処理施設事業は、平成7年度から整備事業を開始し、平成8年度より供用開始していることから、初期に設置した浄化槽については21年が経過したこととなります。浄化槽本体の法定耐用年数は10~15年とされているため、老朽化が進んでいると考えられますが、槽自体の実際の耐用年数は30年以上と言われており、今後は計画的に更新を進める必要があります。なお、浄化槽に流入させるために必要な排水管等の排水設備は、設置義務者がその更新・修繕等の義務を負うこととされていますので、管渠老朽化率・管渠改善率における数値は反映されないものとなっています。
全体総括
個別排水処理施設事業は、平成28年度より新たな整備事業は行わず、自己設置型浄化槽へ移行したことから、今後は新たな整備事業費や企業債の借り入れが発生しないことから、企業債償還費は減少していきます。また、維持管理等に係る総費用を使用料収入のみで賄うことは将来的にも不可能な状況であるため、料金値上げも必要と考えられますが、飛騨市の下水道事業は平成23年度より料金統一しており下水道事業全体の料金回収率を考慮して適正な料金設定を行っていく必要があります。今後も必要最低限の一般会計からの繰り入れを行いながら、将来にわたり安定的に下水処理を行っていくことを目的として、浄化槽の計画的な更新を推進していきます。また、経営の統合等、アクションプランに基づく事業の効率化についても検討した上で、今後の人口減少の影響を考慮した長期的な『経営戦略』を平成29年3月に策定しました。