経営の健全性・効率性について
◆経営の健全性について①経常収支比率は常に100%を超えて推移しており、③流動比率についても、近年では類似団体平均値と比較しても良好な指標値を示し、資金運用に支障をきたす状態にはない。また、④企業債残高対給水収益比率については、類似団体平均値よりも低い水準で推移しているが、老朽化の状況の②管路経年化率がほぼ横ばいであること及び③管路更新率が類似団体平均値よりもやや高い水準で推移していることからすれば、必ずしも必要な更新を先送りしているために企業債残高が少額となっているわけではなく、現状においては経営の健全性を示せているといえる。◆経営の効率性について⑦施設利用率について、当市の指標は低下傾向で推移し、類似団体平均値を大きく下回る水準となっている。また、⑥給水原価については、類似団体平均値と比較すると一貫して高い水準となっていることから、有収率は良好であるものの当市の経営の効率性は低い状況といえる。給水原価を構成する費目ごとに見た場合、特に受水費の高さが際立っている一方で、これら以外の費目では低い水準にあることからすれば、当市の配水能力が配水量に比して相当な余裕があるものの受水を行わなければならない地域の特殊事情によるものと考えられる。【注】平成23年度は、平成24年3月検針に係る給水収益の調定時期を変更したことにより、13か月決算(特殊要因)を行っており、指標によっては外れ値を示すため、この場合には、参考値として捉える必要がある。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率、②管路経年化率について、類似団体平均値よりも高い水準にはあるが、類似団体平均値との差は縮まりながら緩やかに上昇して推移しており、必ずしも必要な更新を先送りしているとまではいえない。また、③管路更新率について、近年では、類似団体平均値程度まで低下し、かつ1.0%以下で推移しているが、これは当市の老朽管更新計画(第1次)の終盤で、施工困難箇所が集中して残っていたためである。このように管路更新に当たっては、布設する配水管の道路事情等により進捗の程度は大きく変動するため、複数年度での更新率で判断するのが適当である。実際の耐用年数は、埋設された管の管種・土質等にも左右されるが、法定耐用年数の40年を超えていても使用には十分耐え得るものである。当市の直近5年間での更新率としては1.14%、約88年ペースでの更新であるが、今後、埋設環境調査や既設管の管体調査などの機能診断を行い、当市での更新年数を設定した上で、最適な更新ペースを構築する必要がある。
全体総括
経営の効率性、老朽化の状況について、一部課題が残るものの、経営の健全性は保たれていることから、現状としては問題はないといえる。しかし、簡易水道事業に対する一般会計繰入金が事業統合までの時限措置であることにより、平成28年度以降の経常収支比率は低下し、更に今後は、人口減少により本業である給水収益も減少していく上、浄水施設の大規模更新が控えていることからすれば、当市の利益獲得力・資金力は確実に低下していくことが想定される。現状では問題がないとしても、費用面の削減に努めていくことはもちろんのこと、将来的には、利益獲得の主力となる水道料金について、適正な原価を基礎とした健全な事業運営を確保できる水道料金水準へ算定し直す必要が生じてくる。そのためには、水道施設に関する投資(更新・再構築)の見通し(投資試算)を立て、将来的に必要な資金量を把握する必要があり、経営戦略の策定が重要といえる。