経営の健全性・効率性について
人口減少期に入り、給水収益が横ばいになる中、全ての施設を一度に更新することは困難である。このため、改良工事の優先順位をつけ、取水・浄水施設や重要給水管路から取り組む方針としている。この方針の下、平成29年度までに取水施設の更新・耐震化工事を実施しており、企業債残高と減価償却費が増加した。企業債残高の増加は④企業債残高対給水収益比率の悪化に、減価償却費の増加は⑤料金回収率が100%を切る原因となっている。一方、施設の更新・耐震化の進展もあり、⑧有収率が向上している。また、①経常収支比率・③流動比率は引き続き100%を超えており、健全経営は当面維持できている。現在、浄水場の耐震化工事に引き続き取り組んでおり、企業債残高や減価償却費の増加等による数値の悪化は今後も続くと考えられる。事業継続に必要な資金能力を含め、健全経営が今後も維持できるかどうか各指標の動向に留意しなければならない。
老朽化の状況について
本市の市域が東西に大きく広がるため、給水区域も東西30kmにわたり広がっている。このため、管路総延長が1,200km以上と非常に長く、その9割が配水支管であり、全ての管路を一度に更新することは困難である。本市の市勢発展に伴う宅地造成が昭和50年代に集中していたため、②管路経年化率・③管路更新率の数値が他事業体よりも低調に出やすいのはそのためである。経営の健全性・効率性とのバランスを考えると、法定耐用年数を超過しても使用に堪え得る配水支管をどのように活用するかがポイントであるので、数値の内情について都度確認していくことが重要である。なお、耐震化・老朽化対策については、苫小牧市水道ビジョンに基づき、取水・浄水施設や重要給水管路を優先して取り組んでいるところである。
全体総括
全体として健全経営は維持できているが、施設設備の老朽化に伴い更新・維持管理費用の増加傾向が続いており、今後も同様と考えられる。このため、経営戦略においては効率的な老朽化対策(建設改良工事の「選択と集中」)を掲げ、計画期間内の資金能力を維持しながら、耐震化・老朽化対策と経営の両立を図る方向性を示している。今後も維持管理手法のたゆまぬ改善を図りつつ、経営の基本方針である「サービス提供の維持」「安全・安心の確保」を実現できるよう、一層の努力が必要である。