経営の健全性・効率性について
激甚災害の指定を受けた平成30年7月豪雨により、市内の水道施設は大きく被災し、一部の地域では断水を余儀なくされた。災害対応に追われ工事の設計等に遅れが生じ、受託工事収益が53,272千円(前年度対比55.42%)減収。給水収益の減も相まり、①経常収支比率は減少した。平成29年4月の簡水統合により、今治市水道事業の経営規模は拡大。事業統合に合わせ、施設の統廃合・広域送水事業を展開。中でも基幹浄水場となる(仮称)高橋浄水場整備事業と新浄水場へ情報データ集約を行い施設運用・人員配置の効率化を目指す「遠方監視制御システム整備事業」は事業費が大きく、財源の一部である企業債借入額は、平成29年度より増加。事業統合により、法非適簡易水道事業の借入が水道事業へ移行した平成29年度より更に起債残高が287,923千円(前年度対比3.4%)増加したこと、給水収益が61,431千円(前年度対比2.1%)減少したことにより、④企業債残高給水収益比率は増加。給水人口の減に伴う水需要の減により供給単価は下がり、⑥給水原価が上昇、結果⑤料金回収率は低下した。現金・預金(流動資産)は増加したが、未収未払費用を含む流動負債の増加がより大きく③流動比率は減少した。施設の統廃合によるダウンサイジングで⑦施設利用率は上昇。また、市内玉川地区は従来⑧有収率が低いため(74.5%:H30年度末)、平成30年度末漏水調査を委託により実施。漏水場所が29箇所発見され、次年度の有収率上昇が期待される。
老朽化の状況について
本市では平成25年度にアセットマネジメント計画を策定。平成29年度に見直しを行い将来の更新投資を検討している。現在進めている(仮称)高橋浄水場等整備事業が令和3度完了予定であり、事業完了後は既存施設の廃止により施設の更新率の大幅な上昇が期待できる。本市では施設の老朽化対策を優先的に実施しており、管路対策が後手へ回っているが、将来的には③管路更新率が1.6%(更新期間60年)以上となるよう工事を実施する必要がある。施設・管路の更新に合わせ耐震化率も向上させていく予定であり、(仮称)高橋浄水場完成後、施設の耐震化率は大幅に上昇する見込。管路更新時には耐震管への布設替を行い、耐震化促進を図っているが、資金確保が不十分な現状においては、収益性を重視した更新投資を行わなければならず、収益性の低いエリアでの漏水リスクへの対応が課題となっている。水道ビジョンに基づく浄水施設の統廃合が完了した後、老朽管路の更新に注力する予定である。
全体総括
施設の老朽化、人口減少に伴う料金収入の減、深刻化する人材不足は、全国的な水道事業の課題であり、経営基盤の強化を図るため、平成30年12月水道法が改正された。経営の効率化を図る方策として、広域連携が掲げられ愛媛県では平成28年度検討会を設置。全体会と東中南予の各地区ブロックで検討を重ねた結果を各市町のホームページで公表している。今治市単体でも、施設を統廃合し集約化することで収益性を高める投資活動を「今治市水道ビジョン」に基づき実施。維持管理コストを抑制するためには、計画的な更新投資を拡充する必要があり、減価償却費の積立を要する。収益効率の向上や資金確保に対応するため、3年に1度水道料金の見直しを実施することとし、平成28年4月供給単価7.2%、令和元年6月8.3%値上げの料金改定を実施した。今後は「広域化推進プラン」の策定に向け、更なる広域連携の可能性につき、近隣市町と協議を進めていく。